心不全を予防する(その1)
Ⅰ 心不全とは
「心不全」とは「何らかの心機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されます。これを一般向けにわかりやすく表現して定義し直すと、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」ということになります。
Ⅱ 急性心不全と慢性心不全
これまで、「急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻して、心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への灌流不全をきたし、それに基づく症状や兆候が急性に出現。あるいは悪化した病態」を急性心不全、「慢性の心ポンプ失調により肺および/または体静脈系のうっ血や組織の低灌流が継続して、日常生活に支障をきたしている病態」を慢性心不全と定義して区別していました。しかし、明らかな症状や兆候が出る以前からの早期治療介入の有用性が確認されている現在では、この急性・慢性の分類の重要性は薄れてきています。
そもそも「心不全」は心腔内に血液を充満させて、それを駆出するという心臓の機能の何らかの障害が生じた結果出現するため、心外膜や心筋、心内膜疾患、弁膜症、冠動脈疾患、大動脈疾患、不整脈、内分泌異常など、様々な要因により引き起こされるものです。しかし、心不全の多くの症例では、左室機能障害が関与していることが多く、また臨床的にも左室機能によって治療や評価方法が変わってくるため、これに則った定義や分類をする必要があるため、現在では世界的にも心不全の分類として左室収縮能による分類が一般的になってきました。
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