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2019年9月24日

アディポサイトカインについて(その1)

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Ⅰ はじめに
 
戦後の高度経済成長による生活水準向上を背景にして、日本人の食生活や社会生活の欧米化が起こり、我が国の糖尿病患者を急増させていて、大きな社会問題となっています。元来、農耕民族である日本人の代謝形態は欧米白人とは大きく異なり、インスリン分泌能は低い状態が続いていました。また、これまで、過剰エネルギー蓄積のための皮下脂肪組織への脂肪貯蔵能は無限だと考えられていました。つまり、理論上人間はどこまでも太ることができるものだと考えられていたのです。しかし、最近の研究では、この過皮下脂肪組織への過剰エネルギー蓄積能が遺伝的に規定されていて、私たち日本人のこの能力が欧米白人に比べて極めて低いことが明らかになりました。私たち日本人には欧米白人にみられるような200Kgを越えるような超肥満の人はほとんどみられないのはこのためなのです。さらに、この皮下脂肪に代表される脂肪組織は単なるエネルギーを貯蔵する能力しかないものと長い相間考えられてきましたが、最近の研究で、脂肪組織には様々なホルモン様物質を分泌する能力があることが発見され、膵臓や肝臓と同様に私たちの代謝に大きく関わっていることが判ってきました。この脂肪組織から分泌される物質をアディポサイトカインと総称しますが、この中には糖尿病にとって良い働きをするものと、逆に悪い働きをするものの2種類があることが判ってきました。今回は、このアディポサイトカインについて勉強してみます。

Ⅱ 内分泌器官としての脂肪組織
 
体脂肪の過剰な蓄積、すなわち肥満は、インスリン抵抗性を引き起こして糖尿病の発症に大きく関与するばかりでなく、脂質代謝異常や高血圧症を合併して、脳・心血管疾患の発症リスクを増大することが判っています。こればかりでなく、脂肪肝や腫瘍、関節炎、喘息の病態営利とも密接に関与することも知られています、
 脂肪組織は、皮膚と筋肉の間にある「皮下脂肪」と、主に腹腔内にある「内臓脂肪」の2種類に大別されます。糖尿病を始めとする肥満関連合併症が、「皮下脂肪」ではなくて「内臓脂肪」の過剰蓄積と深い関係があることが判っています。インスリン抵抗性が強い糖尿病患者で、「皮下脂肪」を除去しても何の変化もみられないことから、「内臓脂肪」の過剰な蓄積が糖尿病を始めとする肥満関連合併症の原因となっていることが強く示唆されています。
 では、「内臓脂肪」のどのような特徴が肥満関連合併症の原因となるのでしょうか。「内臓脂肪」の大半は腹腔内臓器を包み込む腸間膜に蓄積していて、門脈を介して肝臓と直接繋がっています。この解剖学的な特徴から、「内臓脂肪」は肝臓に作用する様々な物質を分泌して、代謝制御に関与しているのではないかと考えられてきました。実際、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の違いを遺伝子発現レベルで網羅的に解析した結果、「内臓脂肪」が実に多くの生理活性分泌蛋白を発現していることが判りました。アディポネクチンやTNF-αなどに代表される種々のアディポサイトカインが同定されて、その生理機能が多くの研究者たちにより明らかになると、「内臓脂肪」が余剰なエネルギーを蓄積するという受け身的な役割だけでなく、様々な生理活性蛋白を分泌することで全身の代謝状態を調節し、更に炎症や免疫応答まで制御している重要な内分泌器官としての機能を持つと考えられています。
 「内蔵脂肪」の内分泌機能としてのこの様な働きを担うのが、最近急速に注目を集めているアディポサイトカインと総称されるホルモンや増殖因子、サイトカインなどです。アディポサイトカインは、広い意味で脂肪組織から分泌される生理活性物質の全てを指しますが、(1)脂肪細胞から分泌される全身のエネルギー代謝に影響を与えるサイトカインと、(2)脂肪組織中の非脂肪細胞(マクロファージなどの免疫細胞や線維芽細胞など)から分泌されるホルモンなどに分類されます。

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