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2018年2月5日

アルコールのカロリー(その1)

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Ⅰ はじめに
 
最近のテレビCMでは、カロリーが一般のビールの半分とかゼロとかいうビールがよくでてきます。糖尿病患者の治療では、アルコールの功罪は繰り返し述べられており、できるだけ禁酒する方向で指導するというのが、これまでは一般的でした。アルコールを飲むと気分が大きくなり、食事に対する自制がとれてしまい、つい食べ過ぎてしまうということは誰もが経験していることでしょう。しかし、一方ではアルコールにはストレスから解放してくれる作用や、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす作用などがあるため、一概に禁止すべきではないという意見もあります。
 アルコールの功罪を議論する際に問題になるカロリーについて考えてみましょう。

Ⅱ アルコールのカロリー
 
そもそも、アルコールのカロリーとは一体何なのでしょうか。「第5版食品交換表」(日本糖尿病学会編)では、「アルコールはエネルギーになりますが、栄養素ではありません。ですから、原則的に他の食品とは交換できません」と書かれているため、これに従って食事指導してきました。ところが、その後に出版された「糖尿病食事療法指導の手引き」(日本糖尿病学会編)には、「アルコールはエネルギー源として利用されるとともに、脂肪酸に合成され、中性脂肪として体に蓄えられるから、高中性脂肪血症や肥満の原因にもなる」と書かれてあり、あたかもアルコールが栄養素になうように書かれていました。この矛盾した表記は、多くの糖尿病専門医から指摘もあり、「アルコールには栄養価はない」という表記に統一されました。
 アルコール1グラム当たりの熱量は7.1kcalとされ、糖質やタンパク質の熱量が1グラム当たり4kcalであることに比べるとかなり高く、脂質の1グラム当たり9kcalに近い高エネルギー食品ということができます。しかし、実際に利用されるエネルギーということになると、アルコールの熱量はかなり効率が悪いために、empty calorie(エンプティー・カロリー)といわれています。

Ⅲ アルコールのカロリーの実際
 
 アルコールのエネルギーの話をするときには、アルコールの代謝について考える必要があります。私たちの体の中のアルコールは主な代謝経路であるアルコール脱水素酵素によるアルコールの分解経路は、高エネルギーを産生する経路ですが、もう一つの代謝経路であるミクロソームエタノール酸化系という経路が反対にエネルギー喪失に働くといわれています。さらに、アルコールによる血管拡張と皮膚温の上昇により体表から失われる熱量も大きいために、摂取されたアルコールのエネルギーが、実際の所どのようになっているのかは、本当のところはよくわかっていないのです。
 一日の摂取エネルギー量を同じにして、食物中の炭水化物エネルギーをすべアルコールに置き換えた食事をとり続けるという実験では、数日の内に体重が減少してくることが確認されています。また、普段の食事に2000kcal分のチョコレートまたはアルコールを余分に摂取したらどうなるのかをみた実験では、チョコレートを食べたヒトの体重が増加したのに対してアルコールを飲んだヒトのでは体重増加がみられなかったという結果になりました。このような実験結果から、アルコールのエネルギーは栄養にならないという考えが支配的ですが、まだまだ不明な点も多くあります。 

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