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2024年7月22日

インスリン抵抗性と肝の炎症(その2)

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Ⅳ インスリン抵抗性と脂質代謝異常
 
脂肪肝は、肝臓内の中性脂肪が過剰に蓄積した状態です。肝臓への遊離脂肪酸の流入及び肝臓での中性脂肪合成により増加し、肝臓での中性脂肪の酸化的分解及び超低比重リポタンパク(very low density lipoprotein:VLDL)としての血中への放出で減少します。この増加と減少のバランスで、肝臓に蓄積する中性脂肪の量が規定されます。
 1)食事に由来する中性脂肪または脂肪組織での中性脂肪分解から生じる遊離脂肪酸の取り込み、2)糖質・アミノ酸からの新規脂肪酸合成、3)ミトコンドリアやペルオキシソームにおけるβ酸化、4)遊離脂肪酸ののエステル化により合成された中性脂肪がVLDLとして血中に分泌される、という大きく四つの経路で脂肪代謝は調節されています。
 インスリン抵抗性の状態では、脂肪組織での脂肪分解が亢進するため、代謝産物である血中遊離脂肪酸が増加して肝臓への遊離脂肪酸の流入が増加します。また、膵臓では代償的にインスリン分泌が増加して高インスリン血症となり、肝臓での新規脂肪酸合成が亢進してNAFL Dに至ります。過剰に蓄積した中性脂肪は過酸化を受け、酸化ストレス、炎症を惹起し、NASHへの進展を促します。すなわち、インスリン抵抗性及びそれに伴う高インスリン血症は、肝臓の脂肪毒性を生じやすく、NASHへの進展を加速する病態なのです。
 一方、インスリン抵抗性がもたらす肝臓の脂質代謝異常は、心血管疾患のハイリスク病態を形成します。肝臓に流入した遊離脂肪酸は中性脂肪に変換され、VLDLの分泌が亢進して、中性脂肪に富んだリポプロテインの血中への分泌が増加して、small dense LDLの増加、低HDL血症といった動脈硬化惹起性のリポタンパク異常が生じます。また、炎症性サイトカイン、線維化関連分子、血栓促進因子の全身への分泌増加をもたらして動脈硬化を促進します。

Ⅴ 2型糖尿病とNAFLDが形成する悪循環
 
2型糖尿病とNASH/NAFLDは、脂肪毒性、インスリン抵抗性ならびに慢性炎症という共通の病態を有していて、これらはお互いに疾患の進展・増悪にも深く関わっています。
 2型糖尿病がNASH/NAFLDを発症・進展させるメカニズムとしては、1)内臓脂肪の分解が亢進して、血中遊離脂肪酸が増加して肝臓への脂肪酸の流入が増加する、2)肝臓でのインスリン作用の減弱に伴い、またNAFLDではインスリンのクリアランスが低下し、高インスリン血症が持続しやすい状態にあります。肝臓のインスリン抵抗性では、糖新生が抑制され難くなっている一方、インスリン受容体を介して制御される脂肪酸合成はむしろ促進しています。このような選択的インスリン抵抗性が生じる結果、肝臓の脂肪化は促進し、最終的に炎症・線維化の誘導につながります、3)高血糖の持続はタンパク質へのブドウ糖の結合及び終末糖化産物を増加させ、幹細胞変性や線維化を促進します。
 一方、NAFLDに伴う肝臓のインスリン抵抗性は、代償的に高インスリン血症をもたらし、やがて膵β細胞は疲弊し、インスリン分泌が低下して高血糖となり、2型糖尿病の発症に至ります。このように、2型糖尿病とNASH/NAFLDは相互に病態を進行させ、悪循環を形成しやすい関係にあるといえます。

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