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2016年10月3日

インスリン抵抗性について(その2)

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Ⅲ脂肪摂取過多とインスリン抵抗性
 
 脂肪は高いエネルギーを含んだ食物で、1グラム当たり約9キロカロリーのエネルギーがあります。炭水化物(でんぷん)やタンパクのエネルギーが1グラム当たり約4キロカロリーにしかすぎないことと比較すると脂肪が非常に高エネルギーであることが判ると思います。
 では、なぜ脂肪摂取過多が糖尿病をもたらすのでしょうか。
 私たちが食べ過ぎたとき、余ったエネルギーは皮下脂肪に中性脂肪として蓄えられます。しかし、この皮下脂肪のエネルギーを貯蔵する能力は無限ではありません。遺伝的に決まっています。つまり、私たちは無限に太ることはできないのです。皮下脂肪がエネルギー貯蔵能力の限界に達すると、中性脂肪は血液中に溢れ、内臓の脂肪組織に蓄えられるようになります。これが内蔵肥満をもたらします。この内蔵肥満もインスリンの働きを妨害するため、インスリン抵抗性の原因となります。
 また、脂肪は私たちの体の細胞で分解されてエネルギーになりますが、この過程でアセチルCoAという中間代謝物を作ります。この物質は、炭水化物が分解されるときにも作られますが、脂肪は非常にエネルギーの高い物質ですから、炭水化物に比べて数倍のアセチルCoAを作りだします。このため、脂肪を大量に摂取する(肉や魚など脂肪を多く含んだ副食を中心にして、炭水化物を多く含むご飯などの主食を少なくとる、いわゆる「おかず食い」という食事をする)と、脂肪由来のアセチルCoAがたくさん作られてしまうために、炭水化物を分解してアセチルCoAを作る必要がなくなり、炭水化物の分解(糖代謝)が遅れがちになります。この結果、炭水化物の代謝が滞り、血液中にブドウ糖が溢れるようになり、高血糖がもたらされ、糖尿病になってしまうのです。
 インスリンは多くのホルモンの中で、唯一血糖値を下げる働きのあるホルモンです。このインスリンが正常に働くためには、細胞の表面にあるインスリン受容体とインスリンが正常に結合する必要がありますが、これも脂肪過多の状態が邪魔するために、インスリンが正常に働けなくなり、このこともインスリン抵抗性の原因のひとつなのです。

Ⅳインスリン抵抗性と高インスリン血症

 インスリンが正常に機能しないと、私たちの体は、結果としてインスリンが不足していると判断します。そのため、膵臓はより多くのインスリンを分泌することで、インスリンの機能不足を補おうとします。いわば、インフレ状態を作ることで、価値の下がったインスリンを量で補おうとするのです。このインスリン過剰の状態は、高インスリン血症といいますが、この高インスリン血症は動脈硬化を促進します。むしろ糖尿病が軽症な方が、動脈硬化が重症化しやすいというのはこのためです。インスリンの作用不足を補うに足りる量のインスリンを膵臓がいつまでも作り続けることができれば、高インスリン血症で動脈硬化が進むことはあっても、糖尿病にはならないで済みます。しかし、この膵臓のインスリン産生能力は遺伝的に決まっていて、私たち黄色人種は欧米白人に比べて、この能力が低いと考えられています。このため、私たち日本人には欧米白人にみられるような極端な肥満者が少ないのに、2型糖尿病になりやすい体質となっているのです。インスリン分泌が限度に達して高血糖がもたらされると、今度は逆に高血糖がβ細胞のインスリン分泌を抑えるように働くようになるため(このことを糖毒性といいます)、インスリン分泌は徐々に低下していくため、糖尿病はさらに悪化するという悪循環に陥るのです。

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