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2024年9月30日

中性脂肪と動脈硬化症(その1)

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Ⅰ はじめに
 
脂質異常症は、高血圧や糖尿病などとともに動脈硬化症の古くから知られた危険因子の一つです。特に、その構成要素である高低比重リポタンパク(low-density lipoprotein:LDL)コレステロール血症および低高比重リポタンパク(high-density lipoprotein:HDL)コレステロール血症と動脈硬化症との関連は、早くから確立されていました。一方、高中性脂肪血症が動脈硬化症の独立した危険因子と認識されるようになったのは、比較的最近のことです。これは高中性脂肪血症が低HDL血症、肥満、インスリン抵抗性など、その他の様々な動脈硬化疾患の危険因子と密接な関連があることや、空腹時と食後で中性脂肪の値が大きく異なるため、中性脂肪と動脈硬化症との関連の予測が異なることが多く、高LDL血症や低HDL血症ほど、独立した危険因子だとの一貫した結果が得られていなかったことがその原因として考えられます。

Ⅱ 高中性脂肪血症と虚血性心疾患
 
1947年に中性脂肪が動脈硬化を促進するという仮説が提唱されて以来、数多くの疫学研究結果が報告されました。1975年に報告された39~59才のアメリカ人男性約3,500人を8.5年間追跡調査した結果から、高中性脂肪血症が虚血性心疾患と有意な関連があると報告されました。同様に、45~63才のイギリス人男性約5,000人の3.2~5.1年の追跡調査でも同様な結果が報告され、そこでは中性脂肪は総コレステロールよりも虚血性心疾患の重要な予測因子であると結論づけられました。我が国でも、40~69才の一般住民約10,000人を対象とした調査研究で、高中性脂肪血症が総コレステロールやHDLコレステロールと独立して虚血性心疾患の危険因子の一つであることが示されました。
 しかし、これらの結果に反する報告も数多く存在します。このような相反する研究結果が見られる理由の一つとして中性脂肪の測定方法があげられています。つまり、空腹時中性脂肪値と食後中性脂肪値のどちらを使用するかで結果が異なりうることです。多くの疫学調査では伝統的に空腹時中性脂肪値を使用することが多かったのですが、現代人は1日の内で空腹状態であるということは少ないため、空腹時中性脂肪値よりも食後中性脂肪値の方が、より現代人の中性脂肪値を反映していて、動脈硬化症との関連を予測するには食後中性脂肪値の方が適しているのではないかと、考えられるようになりました。食事で上昇した中性脂肪値は、食後5~6時間は高値を維持していることが明らかになりました。このため、早朝空腹時に測定された中性脂肪値が低値だったとしても、食後に高中性脂肪となる人は、1日の大半を高中性脂肪の状態にあるからです。実際に、空腹時測定と食後測定で比較した研究では、HDLコレステロールは空腹時測定でも食後測定も予測能に差はなく、総コレステロールやLDLコレステロールは食後測定で予測能が劣る一方、中性脂肪は食後測定の方が優れた予測能があると報告されました。
我が国をはじめとしたアジア太平洋地域の26カ国の96,224人を対象とした調査研究でも、食後中性脂肪値の方が空腹時中性脂肪値よりも優れた予測能を有していることが示されました。
 しかし、29の欧米の研究調査(合計262,525人のデータ)を総合的に検討した研究では、空腹時中性脂肪値と食後中性脂肪値で予測能に違いはなかったと報告しています。このため、これまでの研究結果が一致しなかった理由は、このほかにも存在する可能性があります。
 中性脂肪だけを下げた場合に、虚血性心疾患の発症リスクが下がるのかどうかを検証した調査研究は行われていないため、高中性脂肪血症と虚血性心疾患の因果関係については、統計解析で検討された結果、遺伝的に上昇した中性脂肪とLDLコレステロールが虚血性心疾患と有意な関連を認めたと報告されています。
 以上から、現在では欧米人のみならず日本人にとっても、高中性脂肪血症は虚血性心疾患の独立した危険因子であるとする考えが主流になりつつあります。

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