再診の方は原則「予約制」となります。
052-930-1311
お知らせ
2021年7月26日

味覚障害について(その1)

0

Ⅰ はじめに
 
2002年に発表された統計データによると、味覚障害は1990年までは女性が50歳代、男性は60歳代に多かったが、1996~2000年までは男女ともに60歳代にピークが移り、2008~2012年には男女とも70歳代にピークが移動しています。すなわち、日本人の急速な高齢化が味覚障害の発生年齢にも反映しています。男女比では、60~65%が女性で、重症度でみると、特に軽症の女性が多いのが特徴的です。家庭で料理に携わっている主婦が、家族から味付けの異常を指定されて専門医を受診するというケースが多いのです。
 中等症以上では明らかな男女差は認められず、この段階では味覚障害の発生に性差はないようにもみえますが、更年期ならびに妊娠時の女性に多いこと、味覚を司る味蕾細胞が女性ホルモンであるエストロゲンを合成しているという発見が最近なされていて、このへんに女性の方が常に発生数が多い理由があるのかも知れません。

Ⅱ 味覚異常はヒトが自覚できる亜鉛欠乏の唯一の初期症状
 
亜鉛は食物あるいは飲料水中にも豊富に含まれているため、ヒトでは亜鉛欠乏は起こらないと長い間信じられていました。
 しかし、1961年にイランの地方病として思春期の男性の一部に、①極端な成長の遅れ(小人症)、②二次性徴の未発達、③著しい鉄欠乏性貧血、④肝・脾腫大、⑤皮膚病変(粗糙、乾燥)、⑥土食症という症状を認めました。これらの患者はパン種を入れない小麦パンを食べ、粘土を食べる習慣があり、さらに同じ風習のあるエジプトの村にも同じ症状を示す患者がいることを発見しました。そこで、それまで知られていた亜鉛欠乏動物の知見から食物中のフィチン酸による亜鉛欠乏症を疑い、患者の血漿、毛髪、白血球中の亜鉛濃度が低下していること、さらに放射性同位元素(亜鉛65)を使った研究から、間違いなく亜鉛欠乏が原因であることを確認しました。そして亜鉛の経口投与により、全ての症状を治癒させました。これがヒトでの亜鉛欠乏症の最初の発見です。
 この研究委以降、ヒトの多くの疾患で食事内容による続発性亜鉛欠乏がみられること、吸収不全症候群では亜鉛欠乏はよくみられることなどが分かってきました。そして、味覚の異常はヒトが自覚する亜鉛欠乏の唯一の初期症状であることが明らかになりました。
 ヒトの亜鉛欠乏の初期症状として、①体重減少、②精子の減少、③高アンモニア血症を挙げている教科書もあるが、①は亜鉛欠乏に特徴的とはいえず、②は測定機会を持つことが少なく、③は初期の亜鉛欠乏で必ず修験するとはいえないため、やはり味覚異常が亜鉛欠乏の初期症状として最も信頼が置けるといえます。

   

一覧に戻る
0
ページトップへ
ご予約はこちらから
tel 052-930-1311 FAX 052-930-1310
再診の方は、原則「予約制」となります。※急患や初診患者はこの限りではありません
地下鉄東山線千種駅5番出口から徒歩1分
地図を見る
診療時間と休診日