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2024年11月18日

心不全を予防する(その2)

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Ⅲ 心不全を予防する
 
心不全は、食事、運動などの生活習慣の管理に加えて、心不全の危険因子に対する適切な治療、無症候性心不全例に対する投薬など多方面からの介入で、発症・進行(増悪)・再発の予防が可能になりました。心不全の早期では心不全の発症予防に重点が置かれ、進行した心不全例では心不全症状の改善に加えて、心不全の進行(増悪)・再発予防、生命予後の改善を図ることに重点がおかれるため、心不全の予防と治療を明確に区別することは困難です。つまり、軽症例に対して行うのが狭義の心不全予防で、心不全が進行した例に行われるのが広義の心不全予防であることから、両者を含めた心不全予防について論じることになります。

1)高血圧
 高血圧治療は心不全発症を抑制し、生命予後の延長に繋がります。減塩や減量などの生活習慣の修正に加えて、降圧薬(ACE阻害薬、ARB、利尿薬、β遮断薬など)による治療が行われます。特にサイアザイド系利尿薬は心不全発症予防効果が高いとされています。

2)冠動脈疾患
 冠動脈疾患患者には、心不全を含めた心血管イベントの発症予防と生命予後改善のために、ACE阻害薬の投与が行われます。心筋梗塞後の二次予防でも、心不全の発症予防のためにACE阻害薬、β遮断薬、スタチン、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の投与が行われます。ARBはACE阻害薬に忍容性がない人で、特に左室機能障害のある例に投与されます。
 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による心不全予防効果に関しては、左室収縮能が低下した急性心筋梗塞患者に対して発症3日以降28日以内に完全閉塞の梗塞責任血管にPCIを実施しても、その後4年間に心不全を含む心事故防止効果は認められなかったという報告があります。

3)肥満・糖尿病
 肥満や糖尿病は心不全の発症に関連していて、インスリン抵抗性を基盤とした糖尿病やメタボリックシンドロームはいずれも心血管疾患の主要な危険因子であることから、減量や運動療法などの一般的な生活習慣の改善に加えて薬物治療による包括的なリスク管理が必要となります。一般的に心不全の発症リスクは、身体活動強度と負の相関、BMIと正の相関があります。従来の糖尿病治療薬は、心不全に対する予防効果を示すエビデンスが乏しかったのですが、SGLT2阻害薬であるジャディアンス錠やカナグル錠100mgなどが、心血管病既往のある2型糖尿病患者の心不全入院および心不全死を抑制し、さらには心不全の既往のない患者群に対しても心不全入院を抑制したという成績が報告されています。

4)喫煙
 喫煙は心血管疾患の危険因子であり、心不全患者で禁煙が死亡率や心不全を含む心血管疾患の再入院率を軽減することから、喫煙者には禁煙治療を強く勧められます。

5)アルコール
 アルコール摂取量と心不全の発症率はUカーブを示すことから、飲酒者では適量の飲酒習慣を維持しても構いません。その一方で、多量飲酒はアルコール性心筋症の原因となりますので、その場合は断酒が必要です。

6)身体活動・運動
 身体活動・運動習慣に関して、身体活動量と心不全発症リスクが用量依存性に逆相関し、非運動群に比べて、500MET・分/週の身体活動で心不全リスクが10%低下、1,000MET・分/週で19%低下することが示されています。

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