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2020年12月21日

放射能の基礎知識(その1)

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Ⅰ はじめに
 
2011年3月11日の東日本大震災に伴って発生した東京電力福島第1原子力発電所事故により、大量の放射性物質が、大気、土壌、海洋中へ放出されました。当然ながら多くに人が放射性物質による健康被害を心配し、なかなかその心配が解消しないという事態が生じています。これには、、放射量の量に関する単位体系が特殊で複雑なため、量と影響の関係がなかなか理解できない、あるいは、専門家によって意見が異なり何を信用して良いのか判断できない、という現状が影響を与えているものと考えられます。

Ⅱ 放射能の性質
 
「放射能」という言葉は、一般用語としては放射性物質と同義語に使われることもありますが、自然科学分野で用いる際には、「放射線を出す能力」を意味します。放射能の単位であるベクレル(Bq)は、1秒間に1回壊変が起こる放射能の強さと定義されています。
 放射性物質はエネルギー的に不安定で、余分なエネルギー(=放射線)を出して、他の種類の物質に変わります(壊変)。放射性物質によっては、1回の壊変で安定物質になるものもあれば、数段階を経て安定物質になるものもあります。
 放射性物質は放射線を出すたびに、放射能が減少します。放射能が半分になる時間は放射性物質毎に決まっていて、これを半減期といいます。自然界には、地球誕生時から存在する半減期の長い放射性物質(例:ウラン238:44億6000万年)や、1分足らずのもの(例:ラドン220:55.5秒)、さらにはもっと短いものも存在しています。福島原発事故により環境中にヨウ素131(半減期8.02日)、セシウム134(半減期2.07年)や137(半減期30.1年)、ストロンチウム90(28.8年)などが放出されました。この半減期が約30年もあるセシウム137やストロンチウム90などが事故の影響を長期化する原因になっています。
 放射性物質の体内動態はその化学的性質により異なります。セシウムはアルカリ金属なので、カリウム同様、体全体に分布します。ストロンチウムはアルカリ土類金属なので、カルシウム同様、骨に蓄積します。ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成成分として甲状腺に蓄積されるため、放射性要素が体内に入った場合も甲状腺に集まります。
 放射性物質から放出される放射線は「電磁波」と「粒子の高速な流れ」に大別できます。γ線は放射線検査で使うX線同様、電磁波の仲間で、透過力が強く、遮蔽には鉛のような重い物質が必要です。人体に当たった場合は、体の奥深くまで透過し、通った部分にエネルギーを与えて、細胞のDNAなどに傷をつけます。
 α線は陽子2個と中性子2個の原子核で、β線は電子です。こうした粒子のタイプの透過力は電磁波に比べて弱く、α線は紙で、β線はアルミホイルで遮蔽することができます。また体表面に核種が付着しても、α線ならμm、β線ならmmまでしか放射線は透過しないため、体の重要な器官には放射線は届きません。しかし、α線やβ線を出す物質を体内に取り込むと、細胞の近くで放射線を出すことになります。

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