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2025年1月6日

睡眠障害の重要性(その1)

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Ⅰ はじめに
 
 かつて、「眠れない」ということを主訴に医療機関を訪れると、多くの医師は「眠れないだけでは死なないので気にするな」と対応していました。しかし、睡眠医学が発達した現代では、この対応は間違っているといえます。何らかのきっかけで、夜眠ろうとしても寝付けず、それ以降、また眠られないのではないかという不安感が著しく強まり、眠ろうと焦りすぎるため、かえって興奮して寝付きが悪くなることが繰り返されるため眠れません。すなわち、精神生理学の原因から不眠症を生じる場合だけでなく、高血圧および糖尿病などが既にあることが原因で眠れない場合もあるということも近年明らかになってきています。
 現代社会では、効率化を求めるあまり、睡眠時間の短縮傾向が年と共にみられています。睡眠障害自体がライフスタイルの変化や高齢化による生活習慣病ともいえます。

Ⅱ 睡眠の基礎知識
 
 睡眠の役割には、①体や脳を休めて疲労回復すること、②体の修復や成長を促すこと、③記憶の固定を促進し高次脳機能を強化することが知られています。その睡眠を形成するメカニズムとして、①疲れると睡眠物質が蓄積して眠くなること、②体内時計によりある時間が来ると眠くなること、③オレキシンニューロンの活性低下により、覚醒の維持ができなくなることが分かっています。
 これに加えて、睡眠および覚醒の調整は、覚醒時間の長さによって睡眠時間や質が規定されるメカニズム(プロセスS)と生体内の睡眠覚醒に関する概日リズム関与するプロセスCにより調整される、2プロセスモデルという概念が提唱されています。覚醒時間が延長するにつれ、睡眠物質が蓄積して眠気が強くなることや、クロックリズムによる強制介入のため、一日の内で眠くない時間帯があること等はこのためだと考えられています。加齢により、概日リズム機構は変化します。年齢を重ねるにつれて徐波睡眠の減少、浅睡眠の増加が顕著になるだけではなく、深部体温の概日リズムや覚醒時間の前進が生じ、概日リズム自体の振幅減少、すなわち、睡眠のメリハリがなくなり、昼間の覚醒も保たれにくくなってきます。
 一夜の睡眠の一般的なリズムを、睡眠ポリグラフ検査、すなわち、脳波、筋電図並びに眼球運動等により作成される睡眠図でみてみると次のようになります。
 正常な成人では、夜間に睡眠が開始されてから、まずノンレム睡眠stageN1、2(浅睡眠)からstageN3(深睡眠)と次第に深くなります。通常、レム睡眠はノンレム睡眠開始80分以降に出現し、その後約90分周期に出現します。年齢と共に、総睡眠時間(実際に寝た時間)、睡眠効率(実際に寝た時間/ベットにいる時間)、徐波睡眠並びにレム睡眠時間の割合は減少し、睡眠潜時、ノンレム睡眠stageN1,2は増加します。特に、60歳以降では睡眠効率が低下します。寝床についてから睡眠に入るまでの時間、すなわち、睡眠潜時は加齢と共に増加しますが、その変化はわずかです。これらの背景から、高齢になると、若い頃に比べて総睡眠時間と深い睡眠が減り、浅い睡眠が増え、睡眠効率が悪化します。
 また内因性の概日リズム(クロック形成ペースメーカー)の形成部位は、視床下部の視交叉上核で、メラトニン、深部体温並びに睡眠覚醒リズムを調整しています。その近傍にある脳幹の諸核からの伝達物質と共に、日中は覚醒度を上昇させ、夜間は睡眠を促すように概日リズムの機構は働きますが、高齢になると覚醒時間が前進し、概日リズムの深部体温の振幅が低下します。すなわち、高齢者では睡眠構築の変化により、浅睡眠の増加に加えて、概日リズムの脆弱化に関連して睡眠相の前進が起こります。また、神経変性疾患では、脳幹の諸核が脱落して、伝達物質はさらに減り、睡眠構築は破壊されてしまいます。

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