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2025年12月22日

糖尿病とかゆみ(その1)

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Ⅰ はじめに
 
糖尿病や糖尿病性腎症に伴うかゆみは慢性のかゆみで、抗ヒスタミン薬などのかゆみ止めを用いる治療法に難治性なかゆみです。難治性のかゆみは集中力の低下による勉学障害、労働生産性の低下、睡眠障害、抑うつ状態、最悪の場合は自殺念慮などの生活の質(QOL)の低下をもたらします。
 かゆみには末梢性に生じるかゆみと中枢性に生じるかゆみがあります。末梢性のかゆみは末梢にあるかゆみのセンサーが、ヒスタミンやセロトニンなどのアミン類や細胞から産生するインターロイキンなどのサイトカインのかゆみメディエーターによる刺激や、外部からの物理的・化学的刺激で活性化され、その信号が神経経路を通じて大脳皮質に伝達されて、かゆみが認識されます。
 一方、中枢性のかゆみはモルヒネやエンドルフィンなどの内因性オピオイドが中枢神経系にあるオピオイドレセプターに結合することで生じるかゆみです。
 最近、かゆみを伝達する神経線維にはヒスタミンに反応する神経線維と反応しない神経線維があることが分かり、腎障害や肝障害などの難治性のかゆみをもたらす疾患ではヒスタミンに反応しない神経線維で伝達されることが判ってきました。

Ⅱ 糖尿病に伴うかゆみ
 
糖尿病患者の皮膚はドライスキンを呈していることがよくあります。血糖コントロールが不良な糖尿病では、高血糖によりブドウ糖が多量の水と共に尿中に排出される結果、ドライスキンになります。また、糖尿病により自律神経障害が生じると、発汗機能が障害され、皮膚の水分が保持できなくなることも皮膚が乾燥する原因の一つとなります。ドライスキンは皮膚のバリア機能や角層水分保持機能の低下、水分蒸発量の増加により角層水分量が減少した状態で、潤いのない皮膚の状態となり、難治性のかゆみをもたらします。角層水分は、汗腺からの水分と皮脂腺からの皮脂からなる皮脂膜、セラミド、コレステロールなどからなる角質細胞間脂質、フィラグリン(これはケラチンという線維タンパクを凝集させ束ねて角層のバリアを強固にする働きがあるたんぱく質です)を分解して生成される天然保湿因子で維持されています。これらの保湿因子のいずれかが減少したり欠損すると、ドライスキンが形成されます。
 アトピー性皮膚炎では、フィラグリン遺伝子の変異がドライスキン形成の原因であると推定されていますが、糖尿病におけるドライスキンのメカニズムは明らかではありません。ドライスキンでは表皮のバリア構造の破綻が起こり、かゆみを伝達する神経線維が表皮内で広がり、角層直下まで侵入して、外部からの軽微な機械的・物理的・化学的な刺激により活動電位が生じて、かゆみの閾値が低下することで容易にかゆみが誘発されます。この場合のかゆみの発現にヒスタミンは干与していないので、一般的なかゆみ止めである抗ヒスタミン薬は効果がありません。
 糖尿病患者さんは神経障害性かゆみがあります。この原因として、末梢神経の過剰な発火、あるいはかゆみ伝達経路の中枢抑制が考えられています。神経障害性かゆみは、神経障害性疼痛を惹起する中枢~末梢神経系の障害と同じメカニズムでもたらされると推定されていますが、神経障害性かゆみの原因は多彩で、診断は臨床症状によりなされています。そのメカニズムやかゆみを仲介する物質は殆ど判っていないのが現状です。

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