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2025年6月23日

糖尿病と心不全について(その1)

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Ⅰ はじめに
 
人口の高齢化や食生活の変化などの様々な理由で糖尿病患者数は爆発的に増加しています。糖尿病は、心血管病、特に心不全と密接な関係にあり、互いに直接的・間接的に大きな影響を与えて悪循環を形成しています。

Ⅱ 糖尿病と心不全の関係
 
糖尿病と心不全は密接な関係にあります。糖尿病の存在が直接心筋障害をきたして、いわゆる糖尿病性心筋症と呼ばれる病態を招くことが知られている一方で、心不全の存在もインスリン抵抗性を惹起して糖尿病を悪化させます。特に、利尿薬の使用、長い心不全歴、心不全症状の悪化などが心不全存在下での糖尿病の増悪因子として知られています。
 糖尿病の存在は間接的にも心不全の増悪に関与します。糖尿病の存在で動脈硬化が進行することで高血圧症が進行して、心臓に対する負荷(後負荷といいます)を増悪させます。糖尿病の存在は冠動脈の動脈硬化を進行させ、虚血性心疾患の発症に深く関与します。特に、糖尿病を合併する虚血性心疾患は複数の病変が複数の冠動脈に及び、その狭窄も長くびまん性であることが多く、しばしばカテーテルを用いた経皮的冠動脈形成術には不適で、冠動脈バイパス術が選択されることも多くあります。
 糖尿病は肥満や高脂血症の存在によって増悪します。これらは心不全の危険因子とも一致しているため、糖尿病と心不全は多くの共通した併存疾患を持っていることになります。これらの併存疾患のコントロールが十分でない場合、糖尿病と心不全と両方を増悪させます。
 疫学的には、糖尿病の存在により心不全の発症リスクが少なくとも数倍上昇します。特に、若年者、肥満者、女性、腎機能障害、虚血性心疾患、末梢動脈硬化病変、インスリン依存状態、長い糖尿病罹病歴などある場合はこのリスクが増大します。心不全リスクの増大は、その心不全が心臓の収縮能が低下したものであっても、収縮能が保持されたものであっても認められます。
 糖尿病の存在やその重症度が心不全増悪と深い関わりがあることを考えると、糖尿病を積極的に治療すれば心不全の発症を予防できると考えるのは極々自然なことですが、これまでに糖尿病に対する積極的な治療が心不全の発症を予防したという明確なエビデンスはありませんでした。近年、SGLT2阻害薬が糖尿病患者での心不全発症予防に有効である可能性が示されつつあり、糖尿病と心不全の関連性が再び脚光を浴びるようになってきました。

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