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2025年8月4日

糖尿病と心房細動(その2)

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Ⅲ 糖尿病合併心房細動患者のリスク

1)糖尿病合併と脳梗塞
 日本人の心房細動患者における脳梗塞リスク因子を解析した結果で、脳梗塞に対する独立因子として同定されたのは、年齢、高血圧ならびに脳卒中既往の3因子のみで、糖尿病そのものの関与は同定されませんでした。一方、ヨーロッパでの調査では、心房細動患者における糖尿病の脳梗塞への影響はインスリン使用の有無で異なり、インスリン使用者ではリスクが2.61倍であったのに対して、非使用者では0.93倍でした。この原因として、2型糖尿病の大半は、高齢者であったり、高血圧を合併していたりするため、糖尿病自体が比較的軽症であれば、並存する高齢、高血圧という因子の方が、脳梗塞リスクに対しては前面に出るものと考えられています。一方で、インスリンを必要とする重度の糖尿病では糖化反応の持続的な活性化を伴う糖尿病独自の内皮障害が進行するものと考えられています。

2)糖尿病合併と心房細動の症状
 糖尿病患者に早期から来しやすい合併症として、神経障害があります。その結果、虚血性心疾患を含めた心疾患由来の症状を感じにくい患者が多くなりますが、心房細動にもそれが当てはまります。初発心房細動の調査研究で、有症候性心房細動における糖尿病患者合併率が6.2%であったのに対して、無症候性心房細動での糖尿病合併率は11.6%と約2倍でした。無症候性心房細動では治療介入が遅くなりがちとなり、心房細動慢性化や脳梗塞発症リスクが高まります。従って、糖尿病合併心房細動患者では患者の自覚症状の訴えだけでは見逃してしまうことが多いので、定期的な心電図やホルター心電図の検査を行うことが必要です。

3)糖尿病合併と認知症リスク
 糖尿病患者にはアルツハイマー型認知症が発症しやすいことが知られています。これは原因の一つとされている脳内アミロイドβを分解する酵素とインスリン分解酵素が共通することから、インスリン抵抗性により糖尿病患者の体内でインスリン分泌過多となるにつれて、アミロイドβ分解能が低下することが一因であると考えられています。心房細動でもまた、脳血流の低下や脳内アミロイドβの蓄積が起こりやすくなっていて、アルツハイマー型認知症の発症率が高まることが知られています。このため、高齢の糖尿病合併心房細動患者では、活発な生活や運動習慣を強く推奨して、インスリン抵抗性の改善と共に脳血流を高める生活を意識することが大切となります。

Ⅳ 心房細動治療が糖尿病に及ぼす影響
 β遮断薬は期外収縮を抑えて心房細動発症に対する一定の抑制効果を持つと共に、心房細動発症後の心拍数を低下させる作用を有することから、心房細動治療で汎用されている薬剤です。また、カテーテルアブレーション施行後には、肺静脈周辺の自律神経叢への刺激から交感神経が亢進して頻脈が出現しやすくなるため、周術期のβ遮断薬投与も日常的に行われています。
 しかし、β遮断薬は糖尿病管理を増悪させる因子となることがあります。このため、β遮断薬は必要最小限の用量と期間での投与が重要となりますが、必ずしも必須とはいえないような状況では、直ちに中止することもあります。

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