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2024年9月2日

糖尿病と感染症(その1)

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Ⅰ はじめに
 
2019年末、中国湖北省武漢市から始まった新型コロナウイルス感染症(coronavirus dis-ease 2019:COVID19)は、やがて世界に拡散してパンデミックとなりました。この時、基礎疾患を持つ人はこの感染症に罹りやすいから注意喚起が盛んに促されていました。なかでも糖尿病の人は、肺結核や肺炎、膀胱炎、皮膚炎、歯肉炎、風邪やインフルエンザなどといった感染症にかかりやすいことが知られています。また、感染症にかかると急速に重症化して、健常人に比べて回復するのに時間がかかります。また、感染症というストレスで血糖値が上昇して、コントロールが悪化することで、さらに感染症の病態が悪化するという悪循環にも陥るのです。

Ⅱ 糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由

1 感染を防ぐバリアが弱くなる
 感染から身を守るためには、まず細菌などの外敵から身を守る強いバリアが必要です。体の表面であれば皮膚、また眼、鼻、気道、消化管などであれば粘膜がバリアとなります。糖尿病の人は、皮膚の代謝が障害されています。そのため、新しい皮膚への入れ替わりが遅れて皮膚は乾燥し、傷つきやすくなっています。また、バリアである粘膜を保護するもの、例えば眼では涙、胃であれば胃酸などの量が減少しているため、細菌などにさらされやすくなっています。この様に糖尿病では、最初に感染を防ぐためのバリアが弱くなっているのです。

2 感染を防ぐ機能の低下
(1)白血球機能の低下
 好中球は白血球の成分の一つで、体内にウイルスや細菌が侵入に対する生体の防御機能の中心的役割を担っています。主な好中球機能には、接着能、遊走能、貪食能、殺菌能がありますが、細菌やウイルス感染症が起こると感染部位に遊走・集積して、活発に病原菌を貪食し、活性酸素や殺菌物質を産生することで感染防御に働いています。これらのいずれの好中球機能も空腹時血糖値が200mg/dL以上の高血糖状態では低下することが知られています。

(2)免疫反応の低下
 免疫反応とは、一度感染したウイルスなどの病原体に対して、体内でそれに対する抗体が作られ、次に同じ病原体が体に侵入しようとしたときに、それを防ぐように働く仕組みのことです。免疫を主に担当するのは、白血球の成分の一つであるリンパ球と組織中の樹状細胞と呼ばれる細胞です。このリンパ球機能も高血糖状態では低下します。

(3)血流の低下
 高血糖状態では、細かい血管の血液の流れが悪くなります。このような状態では、酸素や栄養が十分に行き渡らず、細胞の働きが低下したり、白血球が感染部位に到達しにくくなって、感染しやすくなります。内臓の血流も悪くなっているので、肺炎や胆嚢炎、膀胱炎、腎炎などの内臓の病気も起きやすくなります。さらに、感染で受けたダメージの回復にも時間がかかりますしので、皮膚に潰瘍などができてしまうこともあります。また、抗生物質などの薬物治療でも、薬が感染部位に到達しにくいために、薬の効果が弱くなります。

(4)神経障害による影響
 糖尿病の合併症の末梢神経障害があると、痛みを感じる神経が障害されるので、症状が現れにくく、ケガをしたとしても気付かないまま放置され、その間に病気が進行してしまいます。自律神経障害があるときは、排尿するときの膀胱の神経が適正に機能しないので、膀胱内に尿が残ったままとなっています。このため、残尿に細菌などの病原体が増殖して、膀胱炎や腎盂腎炎といった尿路感染症になりやすくなります。

5)血糖値がより上昇
 細菌などに感染すると、インスリンを効きにくくする物質(サイトカインなど)が多くなって、血糖値は普段より高くなります。このことが糖尿病の状態をさらに悪化させて、感染症をさらに進行させてしまうという悪循環に陥ってしますのです。

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