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2018年10月22日

糖尿病と脳梗塞(その1)

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Ⅰ はじめに
 
 糖尿病患者さんにみられる血管系合併症のうち、脳血管障害は、頻度が高く、心血管障害や腎症などとともに、糖尿病患者さんの生命予後と生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす重大な合併症のひとつです。糖尿病患者さんでみられる脳血管障害では、脳出血は少なく、脳梗塞が非糖尿病患者に比べて多いことが昔からよく知られています。また特に中・小梗塞およびその多発例が多いという特徴もあります。

Ⅱ 脳梗塞が発症するメカニズムとその病態
 
 海外の疫学調査では、糖尿病は脳梗塞の独立した危険因子で、その相対危険率は非糖尿病患者の二倍程度であることが示されています。我が国の調査では、福岡県久山町で行われた調査研究が最も有名です。この久山町研究によると、動脈硬化危険因子(血圧・総コレステロール・HDLコレステロール・肥満・喫煙・飲酒)を調整した多変量解析で、男性の糖尿病患者群は正常軍医比べて脳梗塞発症の相対危険度は4.37倍と有意に高く、脳梗塞と虚血性心疾患を併せた心血管病の発症率は、糖尿病の前段階といえる境界型糖尿病でさえ既に1.93倍だということでした。
 この他の危険因子との関連について、糖尿病患者例での脳梗塞の発症は、高齢・高血圧・腎症・心筋梗塞・閉塞性動脈硬化症・網膜症・高尿酸血症などを既に有している例で特に高頻度にみられるとのことでした。
 糖尿病に脳梗塞が多発する原因のひとつとして、脳動脈硬化が高度であることが挙げられます。動脈硬化の部位では椎骨・脳底動脈系に多い傾向があります。また、糖尿病例では非糖尿病例に比べて高血圧合併頻度が高く、糖尿病と高血圧が合併することで動脈硬化が一層促進されるのです。また、高血糖による血液凝固機能亢進状態により血栓・塞栓を生じやすくなるとも考えられています。従って、脳梗塞を予防するためには、長期的には動脈硬化の抑制を図るとともに、短期的には血液凝固能をコントロールする必要があります。
 糖尿病患者さんに起こった脳梗塞の予後について、短期的には糖尿病患者群と非糖尿病患者群との間には有意な差はないとされています。一方で、長期的な予後に関しては糖尿病群の方が死亡率が高いという報告があります。フィンランドの疫学調査では、喫煙・血圧・総コレステロール・糖尿病のうちで、脳梗塞による死亡の最も大きな危険因子は糖尿病でした。イギリスの疫学調査では、脳血管障害入院患者のうち、糖尿病患者群では非糖尿病患者群に比べ、生命予後・機能予後ともに不良であり、治療コストも高かったと報告されています。

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