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2019年8月19日

糖尿病と認知症(その2)

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Ⅲ 糖尿病と認知機能
 
糖尿病と認知機能については非常に古くから注目されていました。すでに1922年には糖尿病患者には認知機能の低下がある可能性が指摘されています。一方で、1988年には、アルツハイマー型認知症患者には糖尿病が少ないというデータを基に、大脳のニューロンはブドウ糖しかエネルギー源にできないので、高血糖には脳保護作用があるのではないかという説も発表されたりもしました。今から考えるとこの説は、糖尿病の人の生命予後が悪いために、アルツハイマー型認知症を発症するまで長生きできる人が少なかったことを間違って解釈しただけだというのが本当のようです。
 1997年になると、2型糖尿病での認知機能低下が明らかにされ、注目されるようになりました。米国で行われた試験では、高齢者を正常糖代謝、境界型糖尿病、糖尿病の三群に分けて、三分間に動物の名前を多く言うテストを行いました。すると、いずれの群の高齢者も18個言えました。4年後に同じテストを実施したところ、正常の人は1個減り、境界型に人は1個と少し減り、糖尿病の人は3個ほど減りました。糖尿病の人に認知機能の落ちる速度が、糖尿病でない人よりも速いことを示唆する試験結果でした。
 米国の聖職者を対象にした研究では、生活習慣がよく、比較的教育程度も高く、ある意味均一な集団を対象に経過を追い、剖検までしました。それによると、年を追ってみると、高齢になるほど糖尿病になる人が増え、糖尿病を発症した人はそうでない人に比べて、認知症の発症が明らかに多いことが明らかにした結果が、2004年に発表されました。
 さらに2006年に発表された「Duke Twins Study of Memory in Aging」も大変な試験でした。これは、何百組もの双子のなかで1つずつだけ病気の有無がずれているペアを比べたものです。4年間観察すると、糖尿病の有無の違いがある双子だけ、糖尿病を持つ人の認知機能が低下していました。血圧や脂質や肥満度については、その有無では認知機能に差はありませんでした。遺伝的にも生活習慣的にも非常によく似た双子で、糖尿病の有無によって4年間で認知機能が変わったのは、糖尿病の影響を示唆するものと考えられています。
 2005年には5つの研究結果を解析した結果、糖尿病を有することは認知症発症のリスクが1.6倍であることが発表されました。
 2007年には、九州久山町の住民健診フォロー研究の結果から、糖尿病のある人はアルツハイマー型認知症のリスクが4.6倍になるという日本人での成績が発表されました。
 これらの成績から判断すると、高齢糖尿病患者では、非糖尿2高齢者に比べて、認知機能の低下や認知症発症のリスクが高い可能性が強く示唆されます。

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