再診の方は原則「予約制」となります。
052-930-1311
お知らせ
2025年3月3日

腸内細菌と糖尿病(その1)

0

Ⅰ はじめに
 
 近年、腸内細菌叢の組成変化が肥満に伴うインスリン抵抗性、2型糖尿病の発症に関与することが明らかになってきました。また、自己免疫性疾患である1型糖尿病の発症にも腸内細菌叢が寄与している可能性も示されています。元来、腸内細菌は、食物繊維などの難消化性多糖の分解や胆汁酸の変換・抱合による脂肪吸収の促進、ビタミン・アミノ酸の産生を担い、消化・吸収機能を補助して宿主と共生しています。

Ⅱ 2型糖尿病・メタボリックシンドロームと腸内細菌
 
 人の消化管内に存在する細菌叢の大部分は大腸に生息していて、大部分はバクテロイデテス門もしくはファーミクテス門に属しています。肥満者では、非肥満者に比べてバクテロイデテス/ファーミクテス門の比率が低下すること、およびバクテロイデテス門の多様性が減少していることが報告されていて、さらに最近の研究で、腸内細菌の遺伝子数が少ない人は全身性の炎症、体脂肪量増加、インスリン抵抗性、脂質代謝異常を来しやすいことが実証されています。また、2型糖尿病患者を対象に、腸内細菌叢を調べた種々の研究では、2型糖尿病患者では短鎖脂肪酸の一つである酪酸を産生するクロストリジウム属の菌やビフィズス菌が減少する一方、酪酸を産生しないファーミクテス門、バクテロイデテス門およびプロトバクテリア門の菌が有意に増加しているという結果が示されています。
 腸内細菌叢により精算される代謝物と糖尿病発症の関連についても研究が進められています。糖尿病患者では腸内細菌叢により生成される代謝物である4-クレゾールの血中濃度が低いことが明らかになり、動物実験でこの4-クレゾールの刺激で、肝臓重量と脂肪蓄積量の減少、β細胞の増殖を伴う肝臓重量の増加、そしてインスリン分泌の増加が示されました。

Ⅲ 短鎖脂肪酸と腸内細菌
 
 短鎖脂肪酸は酢酸、プロピオン酸、酪酸など分子量の小さい脂肪酸の総称で、腸管内で腸内細菌が代謝発酵することで産生され、宿主のエネルギー代謝の観点で両面性の作用を有します。すなわち、脂質や糖質の合成に利用される短鎖脂肪酸は、宿主のエネルギー源ですが、腸管運動機能に影響を及ぼして、消化管でのエネルギー吸収効率を上昇させます。肥満者では短鎖脂肪酸を産生するファーミクテス門が増加していて、エネルギー吸収効率の上昇が肥満発症の一因となっている可能性があります。
 その一方で、短鎖脂肪酸は細胞膜上受容体であるGタンパク質共役型受容体(GPCR)ファミリーのアゴニストとして、宿主のエネルギー代謝の恒常性維持に重要な役割を果たすことが明らかになってきました。このGPCRは消化管・脂肪組織で高発現していて、短鎖脂肪酸はこれを介して肥満細胞でのインスリンシグナルを抑制することで脂肪蓄積量を減少させます。また短鎖脂肪酸の刺激でインクレチンであるGLP-1分泌を促進してインスリン感受性を制御します。

一覧に戻る
この記事が最新です
0
ページトップへ
ご予約はこちらから
tel 052-930-1311 FAX 052-930-1310
再診の方は、原則「予約制」となります。※急患や初診患者はこの限りではありません
地下鉄東山線千種駅5番出口から徒歩1分
地図を見る
診療時間と休診日