再診の方は原則「予約制」となります。
052-930-1311
お知らせ
2020年9月22日

飲酒の血液マーカー

0

Ⅰ はじめに
 
わが国の大量飲酒者は推定400万人ですが、アルコール依存症としてフォローされているのは20万人程度にすぎません。ほとんどの飲酒者が依存症状はなく、臓器障害に対して内科でフォローされているのにすぎません。十分な節酒・断酒指導がされていません。しかし、慢性的に過剰飲酒を継続することは肝臓などの臓器障害、精神障害、脳・神経疾患、種々臓器の発がんの原因となります。このため、過剰飲酒などの問題飲酒者を的確に拾い上げて、指導していくことが重要になります。しかし、常習飲酒者はその飲酒量を性格に申告しない傾向があるため、客観的な血液マーカーが重要となってきます。

Ⅱ γ-GTP(γ-グルタミル・トランスペプチダーゼ)
 
γ-GTPはグルタチオン等からγ-グルタミル基を転移する酵素で、肝、腎、膵、小腸に広く発現しています。アルコールは幹細胞小胞体でのγ-GTP酵素の発現を誘導するため、アルコールの摂取でγ-GTPは高値を示します。アルコール性肝障害では血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)上昇に先行してγ-GTPが上昇することからアルコール性肝障害の早期診断に有効です。日本酒換算1日3合以上を飲酒している常習飲酒家の50~70%、5合以上飲酒の大酒家で90%が異常値を示します。
 血清γ-GTPの半減期は10~14日であることから、断酒後4週間で前値の40%以下になり、節酒・断酒状況の把握に有効です。しかし、肝障害に進展度と相関しないこと、飲酒に対して異常値を示さないノンレスポンダー例が存在するなどの問題もあります。また、肥満、非アルコール性脂肪肝、原発性胆汁性肝硬変などによる胆汁うっ滞、薬物による上昇もあるために、これらの病態との鑑別に注意が必要です。

Ⅲ MCV(Mean Corpuscular Volume:平均赤血球容積)

 MCVは貧血の鑑別診断のマーカーですが、慢性の過剰飲酒時にエタノールおよび中間代謝物アセトアルデヒドによる赤血球膜脂質組成の変化により上昇します。断酒後正常化するのに2~4ヶ月が必要です。アルデヒド脱水素酵素の野生型ホモの群に比べてヘテロ群で有意にMCVが増大しています。アルコールに関連してMCV増大は食道癌の独立した予測因子となっています。

Ⅳ HDLコレステロール
 
アルコール摂取は脂質代謝に影響します。善玉コレステロールのHDL-Cを上昇させます。これは肝臓でのリポ蛋白リパーゼ活性とレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ活性の亢進によるもので、過栄養性の脂質代謝異常との鑑別に役立ちます。

一覧に戻る
0
ページトップへ
ご予約はこちらから
tel 052-930-1311 FAX 052-930-1310
再診の方は、原則「予約制」となります。※急患や初診患者はこの限りではありません
地下鉄東山線千種駅5番出口から徒歩1分
地図を見る
診療時間と休診日