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2022年8月1日

高齢者薬物療法の注意点(その1)

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Ⅰ 高齢者における薬物有害事象の頻度と特徴 
  
高齢者では、若年者に比べて薬物有害事象(広義の副作用:薬物アレルギーなど確率的副作用のほかに、薬効が強く出過ぎることによって起こる有害事象や血中濃度の過上昇によってもたらされる臓器障害なども含む)の発生が多い。急性期病院の入院症例では、高齢者の6~15%に薬物有害事象を認めていて、60歳未満に比べて70歳以上では1.5~2倍の出現率を示します。また、米国の高齢者対象のナーシングホームでは、1年当たり15~20%の薬物有害事象出現率でした。外来症例では、自己申告あるいはカルテ調査という方法に頼らざるを得ませんが、それでも高齢者では、1年当たり10%以上の薬物有害事象が出現するという調査結果があります。 
 高齢者の薬物有害事象は、精神疾患系や循環器系、血液系などの多臓器に出現し、重傷例の多いことが特徴といえます。高齢者入院の3~6%は薬剤起因性といわれ、長期入院の要因ともなります。 
 高齢者の疾患・病態上の特徴の多くが薬物有害事象につながりますが、特に、薬物動態の加齢変化に基づく薬物感受性の増大と、服用薬剤数の増加が有害事象増加の二大要因といえます。

表 高齢者で薬物有害事象が増加する要因

疾患上の要因  複数の疾患を有する→多剤併用、併科受診
慢性疾患が多い→長期服用
症候が非定型的→誤診に基づく誤投薬、対症療法による多剤併用

機能上の要因  臓器予備能の低下(薬物動態の加齢変化)→過剰投与
        認知機能、視力・聴力の低下→アドヒアランス低下、
                      誤服用、症状発現の遅れ

社会的要因   過小医療→投与中断 

Ⅱ薬物動態と薬力学の加齢変化 
  
薬物の血液・組織濃度の変化、つまり薬物動態と組織レベルでの反応性が薬の効き目を左右しますが、薬物動態は、吸収、分布、代謝、排泄のステップで規定されます。 

1)薬物吸収:消化管機能は加齢により低下しますが、鉄やビタミン剤などを除き、加齢による薬物吸収への影響はあまりありません。 

2)薬物分布:細胞内水分が減少するため、水溶性薬物の血中濃度が上昇しやすくなります。逆に脂肪量は増加するため、脂溶性薬物は脂肪組織に蓄積しやすくなります。また、血清アルブミンが低下すると、薬物のタンパク結合率が減少し、相血中濃度に比べて遊離型の濃度が上昇することに注意が必要となります。 

3)薬物代謝:代謝は主に肝臓で行われ、肝血流、肝細胞機能の低下により薬物代謝は加齢と共に低下し、特に肝代謝率の高い薬物では血中濃度が上昇しやすくなります。 

4)薬物排泄:排泄は主に腎臓から尿中に行われますが、薬物によっては肝臓から胆汁中に排泄されます。腎血流量は加齢により直線的に低下するため、腎排泄型の薬物では血中濃度が増加します。 

5)薬 力 学:血中濃度は同じでも加齢により反応性が変化する薬があります。降圧薬であるβ遮断薬やβ刺激薬に対する反応性、中枢神経抑制薬の一部、胃薬である抗コリン系薬物に対する感受性亢進などがあります。 

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