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2020年9月28日

アルコールと癌

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Ⅰ はじめに
 
1987年に世界保健機構(WHO)はアルコール飲料が口腔、咽頭、食道、肝臓の癌の原因であり、人への発癌性の十分な証拠があると発表しました。2007年の再評価で、ここに結腸・直腸癌と女性の乳癌が加わりました。膵臓癌は多量飲酒者との関連が疑われていますが、併存する喫煙の影響が強いために、証拠のレベルとしてはまだ限られたものと扱われています。
 2005年の厚労省の調査では、時々飲酒する人に比べて1日1合未満相当の習慣飲酒者では、飲酒関連癌の罹患と死亡のリスクはいずれも2.3倍で、男性の癌死亡の13%が1日2合以上の飲酒に起因すると報告されました。2011年の36万人を対象にした欧州の調査では、男性の癌の10%、女性の癌の3%が飲酒に起因すると推計されました。

Ⅱ 女性の乳癌
 
アジア以外では十分な根拠が示されていますが、わが国では欧米に比べて女性の乳癌罹患頻度と飲酒量が共に少ないために、統計学的な証拠はえられていません。飲酒による乳癌の発生機序としては、DNA損傷、葉酸代謝への影響、発癌感受性増大などが推測されますが、飲酒によりエストロゲン増加を介してリスクが上昇するという説が有力です。エタノールで1日10グラム増加毎に6%ずつ発癌リスクが増加します。

Ⅲ 結腸・直腸癌
 
日本人男性の方が欧米人に比べて飲酒による大腸癌リスクの上昇が大きく、日本酒換算1合~2合未満で1.42倍、2~3合未満で1.95倍、3~4合未満で2.15倍、4合以上で2.96倍であり、男性の大腸癌の1/4は1合以上の飲酒が原因と考えられています。

Ⅳ 肝臓癌
 
わが国の肝臓癌はC型肝炎が70%、B型肝炎が15%原因していますが、アルコールも発癌を促すことが知られています。男性では1日3合以上から1.66~1.76倍に、女性では1合以上で3.60倍リスクが急増します。また、アルコール性肝硬変からは5年で8%の発癌が生じます。

Ⅴ 妊婦の飲酒と小児の急性骨髄性白血病
 
妊娠中の飲酒の影響は胎児アルコール症候群と呼ばれる先天異常が有名ですが、小児の急性骨髄背白血病のリスクとの関連も報告されています。週10gのエタノールにつき1.24倍リスクが上昇し、特に0才から4才では2.68倍になりました。

Ⅵ その他
 
食道癌、口腔・咽頭・喉頭癌、なども喫煙との関連で増大します。

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