インスリン抵抗性について(その1)
Ⅰ 2型糖尿病の原因としてのインスリン抵抗性
糖尿病の原因は、大きく分けると二つに分かれます。それは、膵臓からインスリンが全く分泌されなくなるために高血糖状態になってしまうというものと、インスリンは分泌されているが、その働きが不十分なために血糖調節ができなくなるというもののふたつです。後者のインスリンの働きが悪くなるためになる2型糖尿病(かつては成人型糖尿病またはインスリン非依存型糖尿病とも呼ばれていました)は、「インスリン抵抗性」がその原因であることが最近判ってきました。
「インスリン抵抗性」とは、脂肪細胞や筋肉などの末梢組織で、インスリンの正常な働きができない状態を表したことばです。
Ⅱ インスリン抵抗性の原因
これまで、2型糖尿病は遺伝的素因に食べ過ぎと運動不足による肥満が誘因として働いて発病すると考えられてきました。1970年代に入って我が国の自家用車の登録台数が急激に増えてきたのに一致して我が国の2型糖尿病患者数も増えています。しかし、国民栄養調査によると、1970年代から一日あたりの平均摂取カロリー数が急激に増えてきてはいません。むしろ、最近10年間位は国民の一日当たりの平均摂取カロリー数は減少している傾向がみられ、2005年の我が国の調査では、平均摂取カロリーは2000キロカロリー以下だとされています。この事実は、食事と糖尿病の間には、何の関係もないことを示すようにもみえます。しかし、食事内容をよく調べてみると、戦後一貫して食生活の欧米化が進行してきた結果、国民一日あたりの脂肪摂取量が1970年代より急激に増加してきているのが判ります。実は、この脂肪摂取の急増が我が国の2型糖尿病患者急増の原因でもあり、またインスリン抵抗性の原因でもあるのです。
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