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2020年3月23日

インスリン注射とアルコール消毒(その2)

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Ⅱ インスリン注射とアルコール皮膚消毒

1)年齢の及ぼす影響
 注射部位のアルコール消毒が実施できない頻度は、40才未満では0%なのに対して、50歳代で2.8%、60歳代では7.1%の人が実施できていないという調査報告があります。高齢者にとっては、容易な皮膚消毒という手技も想像以上に難しい場合があることが示されました。

2)インスリン注射時の皮膚消毒の実態
 糖尿病外来通院中でインスリン治療中の患者さんを対象とした調査では、インスリン注射時に皮膚消毒をしていない患者さんは18%、時々しなかった患者さんは6%で、両者を合わせると24%となり、約4分の1の患者さんが皮膚消毒をしないでインスリン注射をしていることが明らかになりました。消毒をしなくなった理由は以下の通りでした。

 消毒をしない理由 例数(%)
             
自分の判断で中止した 105(55)
途中で「消毒しないでも良い」といわれた 56(30)
初回指導時に「アルコール消毒は省略可」といわれた 24(12) 
他の患者に「必要ない」といわれた 14(5)

3)安全性
 外国の調査によると、1型糖尿病患者13名を対象に、注射部位を5秒間消毒して注射すると、3~5ヶ月後に細菌数を82~92%減少されることができたものの、消毒せずに1,700回以上注射しても、細菌感染は全く認められなかったとのことでした。

4)衣服の上からのインスリン注射の安全性
 インスリン注射中の患者50名を、①アルコール綿で消毒した後にインスリン注射した群と、②皮膚消毒なしで衣服の上からインスリン注射した群との2群に無作為に分けて5ヶ月間観察した臨床研究が行われました。その結果、観察期間中の注射回数は、13,270回行われ、皮膚感染は両群において1例もなく、注射部位に発赤、硬結、膿瘍などは認められなかったとのことでした。また5ヶ月間の試験終了時に、HbA1c値や白血球数に両群間に差は認められなかったとのことでした。これらのことから、衣服の上からのインスリン注射は安全かつ簡便であることが明らかにされました。

Ⅲ まとめ
 
インスリン注射前のアルコール消毒は意味がないことを証明した研究は、今から20年以上も前に米国で行われました。これは、インスリン注射に必要な医療費が高額だったため、少しでも経費を節約できないかという患者さんからの要望から考えられた研究でした。毎回のアルコール消毒のために購入していたアルコール・スワッブの費用が馬鹿にならなかったのがその理由です。それ以来、私は患者さんに注射前のアルコール消毒は不要だと指導してきましたし、耳朶血採血時の耳朶の穿刺時にもアルコール消毒は行わなくなりましたが、感染症などのトラブルは一度も起きていません。
           

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