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2020年9月6日

コレステロールと総死亡

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Ⅰ コレステロールは高いほど長生きするのか 
 
「コレステロールは高いほど長生きする」という新聞記事が掲載され、コレステロール低下療法中の患者さんに不安を与えました。この様な内容の話は良く雑誌やテレビでも繰り返し報道されています。この記事の根拠となったのは、ある研究者が報告した「血清総コレステロール値が低いと死亡率が高くなる」という追跡調査の結果です。この結論は明らかに間違いなのですが、この研究者が何を間違ったのかというと、「予測因子」を「原因」と単純に考えたことです。さらに、追跡調査から原因と考えられる危険因子を明らかにする場合、「予測因子以外の、結果に影響を与える恐れのある因子」(これを専門用語では「交絡因子」といいます)の調査が必要ですが、それを十分に行っていなかったことです。

Ⅱ 総コレステロールが低いと総死亡率は高くなります
 
実は、血清総コレステロール値が低いと死亡率が高くなる現象は、30年以上も前から世界的にもよく知られていて、その因果関係については十分に議論されてきていました。そして、血清総コレステロール値が低いことは総死亡率を高くした原因ではないという結論に至っています。何故かというと、血清コレステロール値が低い人には多くの場合、低くなるような病態や疾病があり、そのために追跡調査をすると死亡率が高くなるのです。すなわち、「血清コレステロール値が低い」ことは、「死亡の原因」ではなくて、「病気の結果」だったのです。

Ⅲ 総コレステロール値が低いと死亡率が高くなるのは結果であって、原因ではありません
 
具体的な例としては、肝硬変、アルコール依存症、あるいは癌、その他の消耗性の疾患などが血清総コレステロール値の低下と死亡の両方に関係している要因だったのです。これを交絡因子と呼びますが、この交絡因子が真の原因であれば、血清コレステロール低値は単に死亡する確率を予測する指標でしかないことになります。すなわち、肝硬変が血清コレステロール低値をきたして、肝硬変による死亡が起こり、総死亡率が高くなるということなのです。癌の場合も同様のことがいえます。この容易な病態があることは、医師ならばよく知っている事象なのです。

Ⅳ 臨床研究の問題点
 
予測因子が原因ではなくて、また、因果の逆転が生じている例は、飲酒習慣と総死亡の関係でも明瞭で、最も死亡危険度が高いのは「禁酒した」人々で、次ぎに「多量飲酒」者となり、少量の飲酒者が最も死亡危険度が低いという結果になります。この結果から、「飲酒している人は禁酒してはならない、禁酒すると早死にする」などと解釈することは、とんでもない間違いです。禁酒は総死亡危険度が高くなることを示す予測因子であっても、決して原因ではないのです。原因は禁酒にいたる病態で、禁酒せざるをえなかった病気そのものなのです。
 

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