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2022年5月30日

フレイルとは何か(その1)

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Ⅰ はじめに 
 
医学の進歩に伴う治療法の発展は高齢者の増加を招きました。2025年にはわが国の後期高齢者が2100万人を超えるものと予想されています。正に、わが国は世界一の超高齢社会といえます。しかし、健康寿命は男性で約9年、女性では約13年平均寿命よりも短く、人生の最終段階で要介護状態となることを避けるのは極めて困難といえます。
 健康寿命の延伸を達成するには、加齢に伴って現れる様々な病気の克服が重要ですが、加齢のメカニズムの解明は疾患の研究に比べて遅々としているため、加齢に伴い生活機能の低下を招く病態としてフレイル(虚弱)が注目されています。特に75才以上の要介護の原因の1位が老衰、すなわち加齢に伴う恒常性の低下=フレイルであることをみても、この対策は急務といえます。

Ⅱ フレイルの歴史と概念
 
今なぜ、高齢者医療の領域でフレイルが注目されているのでしょうか。人間は誰でも年齢と共に老化し、死を迎えます。加齢により様々な臓器機能は徐々に衰え、恒常性の維持が難しくなってきますが、この過程は個人差が大きく、人それぞれといえます。中には、90才以上になっても死の直前まで活動的な人もいれば、60最大で寝たきりになり長期間の要介護状態を経て死に至る人もいます。また、さまざまな疾病の合併により徐々に身体機能が衰えたり、疾病に罹患していなくても身体的、精神的機能の衰えを示したり、社会との交流が乏しくなることにが身体的、精神的機能の衰えにつながり早く老いていく人もいます。
 フレイルに関する最初の医学的記載は1968年まで遡ることができます。当時は高齢者における脆弱性が更新した状態を”frailty”と呼んでいましたが、やがて「身体的。精神的に障害を有し、地域支援のみでは在宅生活が困難な高齢者」を”frail elderly”と定義するようになりました。この状態を「他者からの十分な支援なしでは生きていけない脆弱な高齢者」と呼ぶ人もいましたが、いずれにせよこの時期は、フレイルはどちらかといえば日常生活の活動性(ADL)に障害がある要介護高齢者という捉え方をしていました。
 しかしフレイルの概念は1990年以降に大きな変化を遂げます。1992年にフレイルを「生理的予備能が低下し、要介護リスクが増加した状態」と定義して、それまで要介護状態とほぼ同義に捉えられていたフレイルを、要介護状態の前段階として位置付け区別する考えが生まれてきました。さらにフレイルを医学的に診断することが可能となり、フレイルに関する研究は飛躍的に進歩しました。現在ではフレイルとは、加齢に伴う様々な臓器機能変化や予備能力低下によって外的なストレスに対する脆弱性が亢進した状態で、様々な不良の転帰に繋がる病態として捉えるべきだと考えられています。ここでいう外的ストレスとは、軽度の感染症や事故、手術などの侵襲を指します。これらの外的ストレスに曝されると、フレイルな高齢者は要介護状態に陥るリスクが高くなるのです。

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