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2019年4月28日

健康長寿と咀嚼と咬合の関係

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Ⅰ はじめに
 
 健康と栄養や食との関係がテレビのワイドショーなどのマスメディアで盛んに喧伝されているため、皆さんの関心も高まってきています。一方で、食事時間の短縮を図る、柔らかい、いわゆるファーストフード、健康補助食品、栄養剤などが多用されたり、また老人ホームや老健施設などで必ずしも個々の高齢者の摂取機能に配慮した食事形態がとられていないことなどから、人の生存に不可欠な行動である咀嚼がおろそかにされ、健康や生き甲斐に重大な影響を及ぼしていることも浮き彫りにされています。これらの問題をふまえて、健康長寿を担う咀嚼と、それを健全に営むための基礎となる咬合について考えてみます。

Ⅱ 咀嚼とは
 
 咀嚼を医学的に定義すると、「食物を歯で噛み砕き、唾液を混ぜて嚥下に適した食塊を形成する過程」ということができます。咀嚼は、下顎の開閉や唾液の分泌、舌による食物の混和などの複雑な組み合わせで、歩行や呼吸と同様に周期的で自動的な運動ですが、意識的に速めたり遅くしたり、止めることも可能な運動でもあります。咀嚼を司る神経回路は、歩行、呼吸、姿勢、血液循環の調節などと共に脳幹にプログラムされていています。また、咀嚼の制御は覚醒、学習・記憶、高次精神活動、情動・本能、味覚、食べる動機付け、運動・平衡などが関わる脳の各部の調節機構によるために、生命の維持に極めて重要です。

Ⅲ 不十分な咀嚼の弊害と十分な咀嚼の効能 
 
 いわゆるファーストフードやジャンクフードの代表される、柔らかくて噛む時間が短い食物摂取が主になっている現代では、江戸時代から約60年前までは1回の食事での噛む回数が、約1,500回程度であったものが、620回と約60%減となっています。さらに、小学生の三分の一では、さらにその約60%減だという調査結果もあります。
 これは、必然的に小児の咀嚼筋と関連する骨の成長発育を遅らせ、口顎顔面構造、特に顎の狭小化に伴う歯や舌の位置の不正に起因する口呼吸をもたらし、虚弱体質を形成して顎関節症、種々な耳鼻咽喉科疾患、姿勢障害、睡眠時無呼吸、睡眠障害などを発症しやすくしています。
 同時に、唾液の分泌、特に耳下腺の発育を抑制し、咀嚼に伴う唾液の分泌促進による虫歯や歯周病の予防、口腔粘膜の外傷の修復、食塊をオブラート状に包んで嚥下することによる食道や胃粘膜の保護、カルシウムの沈着による歯の補強、抗菌作用、各種アレルギーに関わる抗原の消去、脳細胞の遺伝子発現への影響の防止、成長の助長などの健康を守る作用を阻害します。
 唾液の分泌は、成人でも健康の維持に必須です。味覚を高揚し、動物とは異なるおいしさを味わい、人として生きることに寄与すると共に、リラックス効果を生み、間は食物中の発ガン物質の発ガン性を減少させ、生活習慣病を発症させるのに関与する酵素の活性が、僅か30秒間唾液に浸すだけでほとんど消失するという実験結果もあります。これらの効果を得るためには、固い食物を一口で最低限30秒、または30回以上よく噛む必要があります。
 最近の若者の多くは、ジャンクフードを一口で数回噛むだけで、ジュースなどで流しのみする食事形態をとっているとの調査報告があります。この様な不十分な咀嚼は、血糖値を咀嚼後に上昇させ続けます。これに対して、一口で30回以上咀嚼すると、20分後から血糖値は低下し始めて正常値まで達し、さらに一口で40回以上咀嚼するとこの効果は一層早まります。
 また、十分な咀嚼は、歯根膜からの機械受容性感覚が三叉神経を介して脳内ヒスタミン神経系を協力に賦活して、食欲を抑制すると同時に、内臓脂肪分解、体熱産生、・放散を促進して糖尿病やメタボリックシンドロームにつながる肥満を抑制します。実際に、一口に50回(50秒)以上咀嚼すると、1回の食事による摂取エネルギー量を約3分の1以上減少させるといいます。
 咀嚼運動は、脳の運動野や感覚野などの意識レベル、学習・記憶、情動や本能、味覚、摂取の動機付け、運動に関わる広い範囲を活性化させます。幼稚園児や小学生、さらに大学生を調べた実験結果では、1回に10~15分、1日に3~4回、2週間以上ガムを噛ませると、テスト成績が上がることが明らかにされています。

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