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2021年8月15日

大気中微小粒子状物質(PM2.5)(その2)

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Ⅲ 欧米諸国での疫学研究

(1) 短期暴露による影響
 PM2.5への短期暴露による健康影響として、PM2.5濃度の日変動と地域内のおける1日単位の死亡、医療機関への救急受診や入院などの関連を時系列的に評価した研究や、同じ対象者の症状の記録や肺機能測定などを毎日繰り返したパネル研究が行われています。

①死亡との関連
 PM2.5濃度が上昇すると、当日または数日以内の死亡者数が増加するという関連が数多く報告されています。いくつかの都市での調査結果を統合した解析では、PM2.5の日平均濃度が10μg/m2上昇する毎に全死亡(事故や自殺などの外因死を除く)は0.3~1.2%、心血管系疾患による死亡は1.2~2.7%増加することが明らかになりました。こうした関連性はPM2.5の日平均濃度が12.8μg/m2以上の場合に観察されています。

②呼吸器疾患との関連
 高濃度のPM2.5への短期的な暴露により、呼吸器疾患による救急受診や入院の増加が報告されています。特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や呼吸器感染症、喘息などによる受診や入院はPM2.5の日平均値が6.1~22.0μg/m2程度で観察されています。
 喘息、COPDなどの呼吸器疾患患者では、PM2.5濃度の上昇に伴って咳や喘鳴などの呼吸器症状の出現、肺機能の低下が観察されています。一方、健常者ではPM2.5濃度と呼吸器疾患や肺機能との間に一貫した関連性は認められていません。

③循環器疾患との関連
 PM2.5への短期的な暴露と循環器疾患(主に虚血性心疾患、うっ血性心不全)による救急受診や入院の増加との関連は、日平均が7.0~18.0μg/m2程度でも認められています。脳卒中発症との関連も指摘されていて、脳梗塞発症リスクはPM2.5の日平均値が15μg/m2以上の日は15μg/m2未満の日よりも34%増加すると報告されています。
 また、PM2.5濃度の上昇により、心拍数の増加、心拍変動の低下、安静時血圧の上昇、不整脈の発生、血液生化学指数の変化などが生じるともいわれています。

(2)長期暴露による影響
 
PM2.5への長期暴露については、死亡、呼吸器疾患、循環器系、生殖・発達など、様々な健康影響との関連が報告されています。

①死亡との関連
 米国東部6都市の住民約8.000人を14~16年追跡した研究では、年齢、性、喫煙、職業などを調整した死亡率がPM2.5濃度が最も高い都市は最も低い都市の1.26倍で、都市別の死亡率は各都市のPM2.5濃度との間に強い関連が認められました。この観察期間を8年間延長しても結果はほぼ同じでした。PM2.5の平均濃度が10μg/m2増加する毎に全死亡の相対リスクは1.16倍、死因別にみると肺癌は1.27倍、循環器疾患は1.28倍でした。

②呼吸器疾患との関連
 長期的なPM2.5への関連により、小児における肺機能の成長障害、喘息の発症などが報告されています。幼稚園児と小学校1年生を3年間追跡した結果では、PM2.5濃度が10μg/m2上昇する毎に喘息の発症リスクが34%高くなりました。こうした関連性はPM2.5の平均濃度は9.7~27μg/m2程度で認められています。 

③循環器疾患との関連
 米国36地区で約6万6000人の女性を対象とした追跡調査では、PM2.5濃度が10μg/m2上昇する毎に心血管系疾患の発症リスクは24%増加しました。疾患別に見ると、冠動脈疾患21%、脳血管疾患35%の増加でした。最近は長期的なPM2.5への暴露と高血圧の発症との関連も指摘されています。

④生殖・発達との関連
 妊娠中のPM2.5への暴露が他事の成長や発育に与える影響として、早産、出生児体重の低下、新生児死亡などとの関連が報告されています。新生児期におけるPM2.5への暴露による呼吸器系への影響を示した研究報告もありますが、結果は必ずしも一致しておらず、現時点ではPM2.5への暴露と生食・発達との関連について明確な結論は得られていません。                        

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