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2022年7月11日

女性の生活習慣病(その2)

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Ⅲ 妊娠合併症と将来の生活習慣病
  
妊娠・出産を経験することも男性と異なる点ですが、近年の研究で妊娠・出産経過が将来の 生活習慣病や脳・心血管病の発症を予測することが明らかとなっています。妊娠高血圧症候 群や妊娠糖尿病は代表的な妊娠合併症ですが、妊娠中にこれらに罹患した女性は将来の高血圧症や糖尿病、脳・心血管病の発症リスクが高いことが明らかとなっており、妊娠中のみ顕在化し、産後はみえなくなってしまう”異常”が、将来の生活習慣病の”予則マーカー”として使える可能性があります。

1)妊娠高血圧症 
 妊娠高血圧症は「妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または高血圧に タンパク尿がみられる場合のいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないもの」と定義され、臨床所見によって妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧症、加重型 妊娠高血圧腎症、子痛に病型分類されます。これらは正常血圧妊娠と比較して将来の心血管病発症リスクが高いことが明らかとなっています。さらに妊娠高血圧腎症を発症した女性は将来の末期腎機能障害のリスクも上昇します。

2)妊娠糖尿病 
 妊娠糖尿病は「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常である」と定義され、妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠は含めません。この妊娠糖尿病の診断基準には粁余曲折がありますが、妊娠中の糖代謝異常が将来の糖尿病や脳・心血管病の発症リスクを上昇させることは明らかで、最近の報告では妊娠中の尿糖1+以上でも約50年後の心血管病死と関連があると報告されています。
  これらは主に欧米からの報告ですが、本邦でも妊娠合併症とその後の健康予後が明らかになりつつあります。人間ドック受診者(平均46.5歳)の健診結果と、受診者が出産した際の母子健康手帳の調査から、妊娠高血圧症既往女性は正常妊娠女性と比較して将来の高血圧症と脂質異常症の有病率が増加していることが明らかになっています。 

IV まとめ 
  
女性の生活習慣病は閉経後に罹患率が著しく上昇しますが、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病を発症した女性は産後どれくらいの期間で発症するのでしょうか。母親の出産5年後に健康診断を行い、妊娠・出産歴と生活習慣病発症の関連を調査した報告によると、出産後5年間での高血圧症発症率は、正常血圧妊娠女性では約35人に1人の割合であったのに対して、妊娠高血圧症既往女性では約5~6人に1人と高率でした。健診時年齢、BMI,高血圧家族歴、1日塩分摂取量で調整した後でも、妊娠高血圧症既往女性は正常血圧妊娠女性と比較して、出産5年後という比較的短期間での高血圧症発症リスクが約10倍高いという結果でした。 
 また、糖代謝に関しては、産後5年間での2型糖尿病進展率は正常妊娠女性では約1%であったのに対して、妊娠糖尿病既往女性は約20%と高率でした。したがって、これらの女性はたとえ閉経前であっても高血圧症、糖尿病発症ハイリスク群であることが明らかとなった。出 産どの女性は育児などで忙しく、自身のことで医療機関を受診する機会は多くありません。また、市区町村の特定健診は40歳以上が対象であるため、それまでは将来の脳・心血管病ハイリスク女性が医療者の目に触れないまま放置されている可能性が危倶されます。

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