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2023年10月2日

慢性便秘症と生活・食事について(その2)

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Ⅲ 生活習慣の改善は慢性便秘症に有効なのか 

ガイドラインでは、「適切な食事や運動、腹壁マッサージは便秘症の症状改善に有効であり行うことを提案する」とされています。 
慢性便秘症の改善と摂取する食物繊維量には必ずしも相関はないという報告が少なからずあります。過剰な食物繊維の摂取は便秘を増悪させることから、食物繊維摂取が有効なのは、摂取量が不足している患者のみであるとも報告されています。便秘症で食物繊維摂取量と症状の改善効果の関係を調査した研究は少ないが、健康成人と便秘症患者の食物繊維摂取量に差はみられませんでした。健康成人では、食物繊維が便柱を太くし、排便回数を増やし、便の粘度を低下させます。また、大腸通過時間を短縮し、便重量を増加させます。 
体内水分量は大腸で調節されます。このため、硬便で便柱が細い便秘症患者が、水分を多く摂取することで、症状の改善をみると考えられます。しかし、便秘症群とコントロール群での水分摂取量を比較検討した研究では、両群間に差は認められませんでした。ミネラルウォーターを飲用すると便秘が改善するとの報告もありますが、ミネラルウォーターにはマグネシウムの他にもイオンが含まれているため、これらの成分が下剤として作用した可能性も否定できません。現在の所、脱水症以外の便秘症に、水分摂取が有効であるということはできません。 
慢性便秘症に対する治療として、運動が有効だという論文もありますが、信頼性は余り高くありません。運動量に応じて腸管嬬動に効果があり、不眠は腸管運動に悪影響を及ぼすと考えられています。便秘症及び健康人では、夜間に下行結腸からS状結腸の運動は殆どみられませんが、覚醒後に運動が活発になります。運動する人には便秘症が少ないとされていますが、その直接的な関連性は明らかではありません。 

IV 便秘とプロバイオティクス 

プロバイオティクスとは、「適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物を指し、腸内細菌のバランスを改善することにより、ヒトに有益な作用をもたらすもの」と定義されます。腸内細菌に対する食物繊維及びプロバイオティクスの有用性は、大腸のマイクロバイオータ(腸内フローラ)を変えることができるという仮説に基づいています。便秘症における腸内細菌や他の微生物の質的・量的な変化についてはほとんど知られていません。小児の便秘症で、クロストリジウムやビフィズス菌が増殖しているという報告や成人の便秘症では乳酸菌やビフィドバクテリアが減少しているという報告もありますが、詳細は不明です。 

V 慢性便秘症にプロバイオティクスは有効か 

プロバイオティクスが便秘に有効とされる理由は,1)ビフィズス菌やラクトバチルス菌は乳酸や酪酸などの酸を産生し、腸管内のPHを低下させ、腸管嬬動を亢進させること、2)プロバイオティクスには抗炎症作用や免疫調節作用があり、これらが腸管運動不全を改善させること、3)腸内細菌叢の変化は腸内容物に影響を与え、メタンガスは腸内通過時間を長くするが、プロバイオティクスはこれを改善すること、4)ある種のプロバイオティクスは、腸管運動や嬬動を刺激することで、結腸通過時間遅延型便秘症に有効とされていること、などですが、慢性便秘症に対するプロバイオティクスの有効性は今後の検討課題といえます。

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