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2020年10月26日

新しいHbA1c表記(NGSP)(その1)

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Ⅰ ヘモグロビンA1cとは何か
 
血液中の赤血球は「ヘモグロビン」というタンパク質で構成されています。このタンパク質のヘム部分の鉄原子に酸素分子が結合することで、酸素を全身に運搬するのが赤血球の大きな役割です。グロビンとはアミノ酸が鎖状につながっているポリペプチド部分のことを指しています。すなわちヘモグロビンはポリペプチド部分とヘム部分が結合したサブユニットと呼ばれるα鎖2個とβ鎖2個で構成されています。
 このα鎖2個とβ鎖2個からなるヘモグロビンをヘモグロビンA0(成人型ヘモグロビン)、ヘモグロビンA0のβ鎖にグルコースやリン酸化糖などが結合したものをヘモグロビンA1(グリコヘモグロビン)、α鎖2個とδ鎖2個からなるヘモグロビンをヘモグロビンA2、α鎖2個とγ鎖2個からなるヘモグロビンをヘモグロビンF(胎児型ヘモグロビン)と呼んでいます。このうちヘモグロビンA1は、結合した糖の種類によりヘモグロビンA1a1、ヘモグロビンA1b、ヘモグロビンA1cなどに分類されています。血中ヘモグロビンの各組成は、ヘモグロビンA0が約90%、ヘモグロビンA1約7%、ヘモグロビンA2約2%、ヘモグロビンF約0.5%、となっています。特にヘモグロビンA1cは総ヘモグロビンの約4%を占めています。

Ⅱ ヘモグロビンA1c(JDS値)
 
ヘモグロビンとグルコース(ブドウ糖)の結合は血中グルコース濃度に依存することから、特にヘモグロビンA1cは血糖値の変動を含んだ平均血糖レベルの指標となることが明らかにされてきました。高血糖が長期間持続した状態ではヘモグロビンA1cの割合は高くなりますから、糖尿病治療で血糖コントロールの可否を判定するためにHbA1cを測定して、治療効果を判断するようになりました。HbA1cを計り始めた頃は、測定機器や測定施設間の測定誤差が大きくて、他のものとの比較ができる状態ではありませんでした。すなわち、名古屋で測った値と、東京で測った値が厳密には比較できない状況だったのです。この様な状況を打開するために、わが国では1993年以降、当時の徳島大学島健二教授が中心になって、HbA1c測定の対象物質が厳密に定義され、定義に基づいて作成されたHbA1cの標準物質(長さでいうところのメートル原器のようなもの)によって測定装置を校正することで、どの施設のどの器械で測定してもほぼ同じ値が得られるように標準化体制が構築されてきました。
 HbA1c標準化の結果、測定施設間の差はかなり小さくなりました。A施設で測定してもB施設で測定しても同じ値になるという極めて当たり前のことが確立されたため、HbA1cが血糖コントロールの指標として、さらには診断基準としても適応できるまでになったのです。
 一方、HbA1cの国際標準化に目を向けると、過去のHbA1c値と継続性と整合性を図りながら国際標準に準拠していかねばなりませんでした。わが国でのHbA1c標準化は日本糖尿病学会(JDS)が主導してきたところから、他国の値と区別するときに「JDS値」と併記する必要がありました。正常成人のHbA1cは4.3~5.8%(JDS値)です。

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