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2021年4月19日

時間栄養学を応用した食事療法(その1)

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Ⅰ はじめに
 
哺乳類では個体内に体内時計が存在し、概日リズム(circadian rhythm)を司っています。体内時計のシステムは入力系⇨振動体⇨出力系の3要素で構成されています。システムの中心となる振動体は脳内視床下部前方にある視交叉上核(suprachiasmatic nucleus:SCN)です。SCNは1万個程度の神経細胞の集合体で、それぞれの細胞には時計遺伝子があり、約25時間周期のリズムを作っています。これに網膜からの朝の光が入力されて、位相を毎日修正して、概日リズムを24時間の日周リズムに変えてSCN以外の脳領域の末梢組織に出力しています。一方、ほとんど全ての末梢組織の細胞内にもSCNと同様に時計遺伝子による自律振動体が存在していて、末梢時計を構成しています。末梢時計にも入力系⇨振動体⇨出力系の3要素が備わっています。こちらの入力系はSCNの中枢時計からの情報に加えて、摂食によるグルコースや脂質、ホルモンなどの液性因子がシグナルになります。振動体はSCNと同様の時計遺伝子によるリズム発疹機構が存在し、出力系はこれらの時計遺伝子で制御される様々な遺伝子が該当して、遺伝子発現が調節されています。この様に末梢時計は中枢時計と同調してヒトの生理的日内リズムを規定していますが、このシステムが変調すると様々な疾患が惹起されます。この様な時間周期現象を扱う学問領域を時間生物学といいますが、その中でも特に栄養学を時間生物学の立場から扱う領域を時間栄養学と呼んでいます。現在のところ、時間栄養学を糖尿病の食事療法に応用した指導理論は確立されていませんが、将来的には非常に重要な研究領域といえます。

Ⅱ 糖尿病の食事療法の基本(お復習い)
 
糖尿病の食事療法は一日の総エネルギー量を患者さんの体格や生活活動強度に基づいて決定して、三大栄養素のバランスは腎症を合併していない限り、糖質を55~60%、脂質を25%、タンパク質を15~20%となるようにするのが基本です。この栄養バランスはアメリカ糖尿病協会の推奨する割合とほぼ同じです。日々の食事内容がこの様な理想的な割合になるように作成された便利なテキストが食品交換表です。80kcalを1単位として、様々な食材が栄養特性によって表1から表6までの6種類に分類され、これに味噌や砂糖などの調味料を加えた付録の7種類のカテゴリーで構成されています。食品交換表は日本糖尿病学会が長年にわたって編集・改訂を重ねてきたテキストでバランスのよい食事が摂れるように工夫されています。食品交換表では各表の1日の単位は朝昼夕の3回の食事に大体均等に分け、果物や牛乳などは各食事に入れるか、間食に回すように勧めています。また朝食、昼食を軽く済ませて、夕食にまとめて食べることはよくないことも記載されています。この様な食品交換表に基づいた適正なエネルギー量と栄養バランスに加えて、時間栄養学の立場に立った指導が加味されれば、より現実的で効果的な食事療法を行うことができます。     

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