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2017年12月4日

海外旅行を楽しむために(その3)

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Ⅳ 時差ボケに備える
 
 時差ボケとは、5時間以上の時差のある地帯へ速度の速い乗り物で到着したときに起こる生体リズムの異常現象のことをいいます。
 時差ボケが生じる原因には、

1)人ではサーカディアンリズムを示す生命現象を支配する生体時計が複数存在すること
2)睡眠の発現様式や自立活動、代謝などがサーカディアンリズムの影響を強く受けるため
3)様々なサーカディアンリズム現象を支配する個々の生体内時計の周期や位相(ピークの時間帯など)が、生体時計本来の役割から高い自立性を持っていること、
4)人間では種々の生体時計の内的な同調が外れやすいこと

などがあります。
 時差ボケは、日本の生活時間に同調した複数の生体時計が、生活時間のことなる地域の時間帯に再同調する過程で生じる現象といえます。
 時差による影響は、多くは睡眠障害を主症状とする「時間帯域変化(時差)症候群」として発現し、主な訴えは不眠や過度の眠気です。

Ⅴ 時差のサーカディアンリズムへの影響
 
 人間の生理現象の大部分は、本来約25時間の周期で変動するサーカディアンリズムに大きく依存しています。このサーカディアンリズム現象は、いくつかの生体時計により支配されていて、外的要因で約24時間に同調されています。
 生体時計には、
1)光が同調因子で、深部体温、メラトニンやコルチゾールなどのホルモン分泌などのリズムを強固に支配するマスタークロック(主振動体)
2)ノンレム睡眠(夢を見ている眠りの浅い睡眠相)の発現にかかわり、社会的規制が同調因子となる、支配力のやや弱い生体時計
3)臓器内での脂質代謝などの代謝リズムを支配して、食事の規則性が同調因子となる肝臓などに存在する生体時計
などがあるとされています。
 睡眠の発現容易性はサーカディアンリズムの影響下にあり、深部体温が下降しメラトニンが分泌される時期に、睡眠の出現傾向が高くなります。また、睡眠の発現容易性には、睡眠要求の蓄積も関連していて、覚醒が続けば睡眠要求は蓄積し、睡眠が始まれば睡眠要求は減少するという、砂時計型のプロセスもあります。
 マスタークロックの支配下で、他の生体時計がリンクして動作することで、睡眠や他の生命現象は時系列的に同調して効率的に機能しています。加齢と共に、この多数の生体時計の内的な同調機能は低下します。
 例えば、12時間の時差のある外国に飛行機で旅行した場合、旅行第1日目は旅行者のマスタークロックのサーカディアンリズムは、日本での生活時とほぼ同様の位相を示します。そのため、旅行先の日中に深部体温が低下し、低照明下ではメラトニンも分泌されます。このような状況下では、脳・身体機能も低下し、眠気が強く現れてきます。
一方、旅行先で睡眠をとる場合、現地の夜は日本では昼に当たり、サーカディアンリズムの影響下で深部体温は上昇し、メラトニンも分泌されません。このようなサーカディアンリズム位相での睡眠の特徴として、入眠困難、持続性の悪化による睡眠の分断、単時間での覚醒、深睡眠やレム睡眠の減少、浅睡眠や中途覚醒の増加などがあります。
 また、糖尿病患者の場合には、海外での食事時間とインスリン分泌・活性リズムにズレが生じるために、血糖コントロールが悪化する場合もあります。これらの原因は、サーカディアンリズム現象の種々の生体時計間の内的な同調が外れ、脱同調が生じるためです。生体時計の位相が12時間の時差のある現地時間に再同調するのには、ほぼ1週間必要です。

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