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2023年1月23日

無症候性脳血管病変(その1)

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Ⅰ はじめに 

一般的に多い無症候性脳血管病変としては脳動脈瘤を除くと脳動静脈奇形、海綿状血管種、もやもや病の三疾患があります。これらの疾患が無症候性に見つかる契機の多くは、脳検診(脳ドック)ないし頭痛・めまいなどの軽微な神経症状に対するスクリーニング検査においてで、いずれの疾患も、無症候性の場合には原則的に(一次)予防や治療の必要となることはありません。 

Ⅱ 症候性脳動静脈奇形 

脳動静脈奇形とは脳の動脈と静脈との間に、本来あるべき毛細血管ではなくナイダスと呼はれる異常血管吻合を生じている先天性と考えられる疾患のことです。若年者の皮下出血の原因として多く、妊娠中には出血の危険性が増大する疾患として重要です。 

1)疫学と自然経過 
脳動静脈奇形の発生頻度は年間10万人に1人で、くも膜下出血をきたす脳動脈瘤の1/10、全脳卒中の1%です。破裂は20から40歳代の若年者に多く、80%が大脳に発生します。 
自然経過の中での脳動静脈奇形の出血率は年間2~3%とされ、出血後暫くの期間の出血率は上昇しますがオ尉生期は年間2%と考えられています。症候性脳動静脈奇形の長期間の追跡調査では出血の可能性は年間4%、死亡率は年間1%、重症合併症、死亡率合計は年間 2.7%でした。脳動静脈奇形の初回出血による死亡率は10%とされていて、この値は出血で約半数が死亡すると考えられている未破裂脳動脈瘤に比べると明らかに低いといえ、また未治療の脳動静脈奇形からの出血は、基本的には他の原因による脳内出血より予後が良いとされています。 

2)治療 
脳動静脈奇形の治療の目的は、ナイダスの完全摘出・消失による将来の出血予防です。そのため、外科的摘出が最も根治的といえますが、大出血の可能性もあり、技術的にも難しいものがあります。しかも重要な機能局在を持つ部位近傍の脳動静脈奇形では、摘出は後遺障害発生のリスクもあります。最近では術前処置として新しい塞栓物質が使用可能となり、血管内治 療と組み合わせて外科治療がより安全に行えるようになりました。 
ガンマナイフなどの定位放射線治療では直径3cm以下で25グレイの周辺線量で2~3年後に90%の消失率となり、深部脳動静脈奇形で特に好んで選択されますが、放射線壊死や嚢胞形成などのリスクがあります。 
最近、無症候性脳動静脈奇形に関して、内科的治療の方が侵襲的治療よりも脳卒中リスクか有意に低 いという調査研究結果が報告されましたが、将来の脳動静脈奇形の破裂の可能性は2%前後と決して低くなく、若い人に発見されることが多いことから、個々の症例に応じて治療法を判断する必要があります。

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