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2022年2月21日

生体リズム障害と肥満症(その1)

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Ⅰ はじめに
 
世界中で肥満者は増加していて、わが国でも平成24年国民健康・栄養調査結果によれば、BMI25Kg/m2以上の肥満者の割合は男性29.1%、女性19.4%であり、4~5人に一人は肥満者になっています。日本での肥満や糖尿病患者の増加の背景として、特に脂肪摂取量の増加による過栄養や運動不足などが大きな要因とされています。これに加えて、コンビニやファストフード店などで24時間営業が一般化してきたために増えてきたシフトワーカーに肥満や生活習慣病の合併率が高いことが報告され始めています。このようなシフトワーカーにみられる生体リズムの乱れがどのように肥満と関連するのでしょうか。

Ⅱ 生体リズムとは
 
ヒトの生体内には、一日の中で様々な周期を持つリズムがあります。その中には、環境因子により生じる外因性リズムと生体内にもともとある内因性リズムがあります。数時間という短いものや年周期という長いものまで様々なリズムもありますが、日単位、すなわちその周期が24時間前後の概日リズムを生体リズムとしてとりあげます。
 概日リズムは後で説明する時計遺伝子により作られ、個々の単一細胞単位にあり、細胞外の刺激に反応して振幅,位相の変化を起こします。また、概日リズムは生涯にわたり持続して、ヒトを含む哺乳類では明期・暗期の環境因子でその振動が同調します。哺乳類では睡眠、覚醒だけでなく血圧、体温、脈拍、ホルモン分泌、神経活動、免疫機能などの多くの生体機能に24時間を周期とした概日リズムがあり、体内時計である時計遺伝子で調整されています。

Ⅲ 中枢時計と末梢度計
 
哺乳類では1997年に Period(Per)をはじめ、BMAL1、CLOCK、Criptochrome(Cry)の4種類の遺伝子が初めて同定されました。主として、概日リズムはこの4つの時計遺伝子の転写、翻訳によるフィードバックで成り立っていることが明らかにされています。 
 体内時計には、破壊することで睡眠、覚醒ならびに飲水などの行動リズムが消失することが示された「中枢時計」と、ほとんど全ての末梢組織にある「末梢時計」に分類されます。中枢時計は間脳視床下部にある視交叉上核の時計細胞核にありますが、心臓、肝臓、腎臓、筋肉、脂肪組織、末梢白血球、など多くの末梢組織にも時計遺伝子があり、周期的な振幅が観察される末梢時計として知られています。中枢時計である視交叉上核では、網膜からの光刺激で個 々の細胞のリズム位相が同期・増幅されています。また、視交叉上核は全身の末梢組織における個々の細胞の末梢時計を同調させるマスターペースメーカーとしての機能も担っています。すなわち、視交叉上核による制御がなければ個々の細胞に存在する時計遺伝子の振幅にズレが生じます。末梢時計では、視交叉上核以外に食事、ホルモン、神経伝達物質、温度による影響を受けることが分かっています。

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