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2021年5月24日

糖尿病とがん(その2)

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Ⅱ メカニズム
 糖尿病とがんの関連性には高インスリン血症・高血糖・肥満・炎症・糖尿病治療薬など様々な因子が複雑に関与しています。

1)高インスリン血症
 2型糖尿病はインスリン抵抗性と代償的高インスリン血症を特徴とします。さらに2型糖尿病患者では肥満や運動不足が多く、高インスリン血症がさらに進行します。動物実験の成績からインスリンはインスリン様成長因子-1(insulin-like growth factor-1:IFG-1)受容体に結合することでがんを誘発すると考えられていています。一方、ヒトでは1型糖尿病患者のがんリスクは2型糖尿病患者よりも低いものの、一般人との比較では結論に達していません。
 なお、糖尿病患者で前立腺がんのリスクが低いことの理由として、糖尿病患者では性ホルモン結合グロブリンが低く、さらにインスリン抵抗性によりテストステロン産生が低下するためテストステロン低下症が少なくなく、前立腺がんはテストステロン依存性であるため、糖尿病患者では前立腺がんのリスクが低下すると考えられています。

2)高血糖
 2型糖尿病のがん細胞増殖や転移は高血糖で促進するといわれています。また、血糖値が高くなるほどがんが発症しやすくなるという成績もあります。さらに高血糖は酸化ストレスを高めるため、発がんの第1段階であるDNA損傷を引き起こすとも考えられています。

3)糖尿病治療薬
①インスリン・スルホニル尿素(SU)薬・グリニド薬
 治療薬としてのインスリンは構造上の類似性からIGF-1受容体を介して発がんリスクを高める可能性が指摘されていますが、インスリン治療中の患者でがんが多いという報告はない。外国の報告では、SU薬使用でがんリスクが増加したというのもあれば低下したというのもあります。いずれにせよ、SU薬やグリニド薬など内因性高インスリン血症を惹起する薬物の使用に関しては、発がんリスクを増加させないためにもできるだけ少量使用にする必要がありそうです。

②メトホルミン
 メトホルミンは体重減少およびインスリン抵抗性改善による高インスリン血症と高血糖の改善に加えて、エネルギー代謝を調節するAMPキナーゼの活性化を介して発がんリスクを低下させると考えられています。多くの臨床報告でメトホルミン服用者で発がん・がん死のリスクが低下すると報告されています。

③ピオグリタゾン
 インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンは高インスリン血症を改善することで発がんを抑えるため全がんリスクを低下させるとの報告がなされてきましたが、膀胱がんを増やすという報告がフランスから発表され一時期問題になりました。これは現在では否定されています。

④αグルコシダーゼ阻害薬
 食後の高血糖を改善し酸化ストレスを抑えるため、発がんの抑制にも効果があると考えられていましたが、アメリカからの報告で発がんが増えたとありましたが、台湾の調査では否定されています。

⑤GLP-1アナログ製剤・DPP4阻害薬
 インクレチン関連薬は一部のがんのリスクを増加するともいわれていますが、DPP4阻害薬による発がんリスクの増加は認められていません。

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