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2019年2月4日

糖尿病と脳神経麻痺について(その1)

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Ⅰ はじめに
  
 糖尿病に伴う神経障害で最も代表的なのは末梢神経障害です。多くの患者さんが心配するのは感覚神経が障害されて引き起こされる、しびれ感や知覚鈍麻などが代表的な症状として有名なこのポリニューロパチー(多発性神経障害)です。
 しかし、糖尿病ではこれ以外にもモノニューロパチー(単神経障害)も引き起こされます。その中で、実際の臨床の場で最も多くみられる単神経障害は脳神経麻痺です。この脳神経麻痺は急性に発症して日常生活に大きな影響与えるために、患者さんが脳梗塞や脳出血などという脳血管障害を心配して、内科ではなくてはじめから脳神経外科を受診することも少なくありません。
 ヒトの脳神経には、Ⅰ 嗅神経、Ⅱ 視神経、Ⅲ 動眼神経、Ⅳ 滑車神経、Ⅴ三叉神経 Ⅵ外転神経、Ⅶ 顔面神経、Ⅷ 聴神経、Ⅸ 舌咽神経、Ⅹ 迷走神経、Ⅺ 副神経、Ⅻ 舌下神経、の全部で12の脳神経がありますが、このすべての脳神経が糖尿病で障害されやすいというものではありません。

Ⅱ 動眼神経麻痺
 
 急性に発症する脳神経麻痺の中でも糖尿病患者で最も多くみられるものです。
 ものが二重に見える(複視)という症状が最も多い訴えで、まぶたが下がる(眼瞼下垂)などの症状を伴うこともあります。また、眼の周りや眼窩内の疼痛を伴うこともあります。
 眼球を動かす筋肉を支配している神経である動眼神経・滑車神経・外転神経の麻痺が原因で起こります。これらの神経の中では動眼神経麻痺が最も多くみられます。
 糖尿病が原因で起こる動眼神経麻痺では、瞳孔機能が正常に保たれていることが多く、これが他の原因(脳腫瘍や動脈瘤)による動眼神経麻痺と鑑別するときに重要な所見です。瞳孔機能に重要な副交感神経線維が、動眼神経の神経周膜の下を走行しているために、神経束中心部の虚血巣を免れるために瞳孔機能が正常に保たれるのだとされています。
 動眼神経麻痺の原因は血流障害です。血糖コントロールが悪い糖尿病患者では、動眼神経を栄養する細動脈・最小動脈の変化が起こりやすいうえに、起立性低血圧、低血糖などの神経内血管の微小循環を悪化させる因子が起こりやすいために、虚血に陥り易いために動眼神経麻痺が起こりやすいのだとされています。
 幸いなことに、虚血性外眼筋麻痺の予後は良好で、多くの場合は血糖コントロールを良好に維持するだけで数ヶ月以内に完全に元に戻ります。
 しかし、複視や眼瞼下垂は視機能に重大な影響を及ぼすために、特に運転や高所作業などの勤務に携わっている患者さんでは注意が必要です。アスピリン投与による予防効果に関しては明らかではありません。

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