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2019年3月25日

糖尿病と視力障害(その2)

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Ⅲ 糖尿病性網膜症
 
 糖尿病性網膜症は長期間の累積した高血糖によって引き起こされたポリオール代謝異常をはじめとした様々な代謝異常や血管因子の異常により、血管壁の構成や血液性状が異常になるために発症する網膜毛細血管の閉塞が最初の病変だとされています。この閉塞はやがて拡大して、網膜内の新生血管を生じさせたり、硝子体への新生血管を生じる増殖性網膜症の時期を経て硝子体出血や網膜剥離を引き起こします。
 治療の上で重要なのは、血管閉塞の範囲を把握して増殖性網膜症に至る前に、時期を逃すことなくレーザー光凝固治療を行うことです。点状出血や斑状出血の数が多いことや、軟性白斑が多数出現したり、血管の拡張などという網膜の「顔つき」が悪くなることで、眼科専門医はこの適切な時期の把握を行います。しかし、比較的静かな眼底のようにみえても血管閉塞が進んでいることはよくあります。このような見落としを防ぐためには、眼科医による蛍光眼底造影検査が必須です。検診などで行われている、眼底の中心部だけをみている眼底写真では、中間周辺部から進行してくる眼底の初期変化を正確に捉えることはできません。フルオレスセインという蛍光色素を使う蛍光眼底造影は、眼底中心部だけではなくて、眼を移動させてできるだけ広い範囲の眼底部分を撮影します。また、網膜電図という、コンタクトレンズにより眼の電図を記録する方法でも、網膜の虚血の程度を調べることができます。いずれの方法でも、網膜に虚血部分があると判断された場合は、その虚血部分にレーザー凝固が十分に行われれば、バランス上健常網膜のみとなり、網膜症は終息します。レーザー治療が完成しないうちに外来受診を中断したり、ひと通り終わりといわれて安心して受診しないでいると、知らないうちに血管閉塞が進行して、レーザーの追加治療の時期を逃してしまうこともあります。

Ⅳ 糖尿病黄斑浮腫
 
糖尿病網膜症で重要なものに糖尿病黄斑症があります。この病態は、眼球中心である黄斑部網膜の細胞 内、細胞外浮腫です。黄斑浮腫は、網膜症がそれほど進行していない時期でも発症することがあり、日常視力のほとんどを司る黄斑部の病変は視力低下に直結し、日常生活を送る上で大きな支障となります。
 糖尿病黄斑浮腫にはステロイドやその他の薬物療法可能性を探る治験も始まっていますが、血管からの血液液性成分と共に漏出した脂質が、黄斑部の中心下に沈着すると恒久的な視力障害を残すことや、3ヶ月以上の長期間浮腫が持続すると網膜の機能を永久に失うことから、思慮が著名に低下する前に硝子体手術などにより速やかに治療することが望ましいとされています。矯正視力が0.3より低下した場合には、術後に0.3以上に回復する確率は40%以下といわれています。

Ⅴ 視神経症
 
 糖尿病性視神経症には、血糖コントロールが悪い症例で急激に視力低下と中心暗点をきたすけれども、ビタミン剤などで自然に回復していくタイプと、水平半盲(視野の上半分や下半分が欠損すること)をきたすタイプで、比較的高齢者に多い虚血性視神経症のふたつのタイプがあります。後者では、ステロイド療法やプロスタグランディン点滴療法などが行われることもありますが、残念ながら視力回復はあまり期待できません。
 また、増殖性網膜症で硝子体手術を行ったときに、解剖学的な手術は成功しているにもかかわらず、視神経萎縮のために視野狭窄が進行していくことがよくあります。このような悲劇を避ける意味でも、日頃から良好な血糖コントロールを維持するように努めることが大切でしょう。

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