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2019年9月2日

糖尿病と認知症(その4

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Ⅵ 脳におけるインスリンの作用
 
一体、脳でインスリンはどのような働きをしているのでしょうか。 
 インスリンが神経細胞のエネルギー代謝を調整していることはよく知られています。インスリンはシナプス(神経接合部)機能へも影響があり、栄養因子として神経細胞の維持にも関与しています。
 最近、ロシグリタゾンというインスリン抵抗性改善薬(アクトスの類薬)を認知症の人に使うとどうなるかという研究が米国を中心に行われました。軽いアルツハイマー病、あるいはその前段階、軽度認知機能障害患者にロシグリタゾンを6ヶ月間内服して貰ったところ、プラセボ(偽薬 :当然認知機能が悪くなっていきます)を内服した人よりも認知機能が保たれるという結果が2005年に報告されました。同様の報告はその後もされています。
 また2008年には、軽いアルツハイマー病あるいはその前段階の人に3週間、速効性インスリンを経鼻投与したところ、血糖値や血中インスリン濃度には変化がなかったのに、認知機能の改善がみられたという研究報告がなされました。
 以上のことから、糖尿病と認知症の関連に関してまとめてみましょう。
1)症状を伴うような大きな梗塞は当然、認知機能に大きな影響を及ぼします。
2)症状を伴わない小さな脳梗塞や白質病変でも認知症がより加速される可能性があります。
3)脳におけるインスリンの作用不足も認知症発症を増加させている可能性があります。

Ⅶ 糖尿病治療の認知症への影響
 
患者の性別、年齢、糖尿病の罹病期間、HbA1cやインスリン投与量などいう糖尿病患者の様々なパラメーターと認知機能との相関を調べた結果によると、HbA1cが低いほど認知機能テスト結果がよいという結果が出ました。
 2009年に報告された比較的高齢者を対象にした研究でも、HbA1cを低く保ち、糖尿病を厳格に治療した方が、認知機能の低下を抑制できたとしています。
 認知症機能を調べるDSSテストの成績によると、高齢者が1歳年をとると、このポイントは約0.7ポイント低下しますが、HbA1cが1%上昇する毎に、このポイントが1.5ポイント低下するという結果がでました。つまり、HbA1cを1%下げると、2歳年をとる分の認知機能の低下が防げるということを意味します。
 適切な糖尿病治療が、認知症発症の危険を減らす可能性を示すものといえます。

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