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2022年12月19日

糖尿病・肥満と腸内細菌(その1)

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Ⅰ はじめに 
  
ヒトの腸内には1Kg、100兆個を越える腸内細菌が共生しているとされ、腸内細菌が有する遺伝子の数はヒトの100倍に及びます。最近、解析技術の進歩により、腸内細菌が2型糖尿病や肥満の病態に影響を与えることが明らかになってきました。個人が有する腸内細菌叢は幼児期以降にある一定の個人特有の組成を示すようになりますが、その組成は遺伝要因と環境要因により決定されると考えられます。しかし一卵性双生児の検討から、遺伝的要因より出生後の環境要因が主に個性を決定することが明らかにされました。したがって、腸内細菌組成は個人内で比較的安定しています。また、民族レベルで多く認められる腸内細菌種に差があることも認められ、日本人にはビフィドバクテリウムが多いとされています。さらに食習慣を反映して、炭水化物摂取とプレヴォテラ属、脂肪摂取とバクテロイテス属の腸内細菌が相関すると報告されています。 

Ⅱ 糖尿病・肥満と腸内細菌
   
2000年代中頃から肥満症や2型糖尿病での腸内細菌叢の研究が精力的に行われるようになりました。肥満個体と非肥満個体の腸内細菌叢を比較すると、肥満個体ではヨーグルトなどの発酵食品にみられるヒルミクテス門に属する腸内細菌が多く、腸内細菌の主要な構成菌であるバクテロイデス門に属する細菌が少ないという偏りがマウスならびにヒトで認められましたが、これらの個体が食事療法で減量するとこの偏りが解消することも報告されています。さらに肥満個体マウスの腸内細菌叢を無菌マウスに移植すると、移植されたマウスが肥満してきたことから、腸内細菌叢は宿主のエネルギー代謝状態を反映し、かつ腸内細菌自体が宿主のエネルギー代謝異常を惹起する、という代謝異常症と微生物の連関概念が示されました。
その後、この肥満者と非肥満者の腸内細菌叢の違いについて多くの検討がなされていて、腸内細菌叢に関して必ずしも一定の結論は得られていませんが、肥満者と非肥満者では腸内細菌叢の組成に差異があるということが示されています。
糖尿病患者では乳酸菌属の細菌や大腸菌が多く、エネルギー消費を活性化することで知られている短鎖脂肪酸のひとつである酪酸を産生するロゼブリア属やフィーカリバクテリウムプラウスニッチイが減少しています。しかし、2型糖尿病患者で認められる腸内細菌の変化の多くが、糖尿病治療薬のメトホルミンの内服などの治療介入によって生じるとの報告もあり、高血糖そのものや内服薬の影響も考慮する必要がありそうです。 

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