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2022年12月26日

糖尿病・肥満と腸内細菌(その2)

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Ⅲ 腸内細菌が糖尿病・肥満の病態へ与える影響

1)腸内細菌による短鎖脂肪酸産生と糖エネルギー代謝
酢酸、プロピオン酸,酪酸は主に腸内細菌により難消化性の炭水化物などから産生される短鎖脂肪酸で、腸管腔内に高濃度で存在します。これらは腸管上皮細胞など宿主の重要なエネルギー源ですが、宿主の肥満形成に影響していることが示されています。この経路で得られるエネルギーは欧米人では1日140〜180kca1になると考えられていて、肥満患者や肥満モデル動物では腸管内の酢酸、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸産生亢進を認めます。実際に肥満マウスの腸内細菌を移植された無菌マウスは、通常マウスの腸内細菌を移植された無菌マウスに比べて、便中のエネルギー喪失が少なく、肥満・インスリン抵抗性を呈することから、肥満個体の腸内細菌は外界からのエネルギー回収能力に優れた臓器ともいえます。腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が末梢組織での脂肪蓄積、インスリン感受性にも影響しているとされています。 

2)腸内細菌による胆汁酸代謝と糖エネルギー代謝 

胆汁酸にホルモン様生理作用があることに注目が集まっています。胆汁酸は小腸L細胞の GLP-1産生を促進し、血糖値を改善させる効果があります。腸管内の胆汁酸の料・組成の差が腸管ホルモン分泌の差につながり、摂食量に影響し耐糖能や肥満の形成に関与している可能性があります。胆汁酸は腸内細菌で多彩な代謝を受けるため、腸内細菌の違いが個人の組成の差に繋がると考えられています。 

3)腸内細菌を標的とした糖尿病・肥満の治療 

腸内細菌の偏りを他人の腸内細菌叢を用いて補正する試みる治療法が、便微生物移植術です。これは健常なドナーの便を水に溶解して経鼻チューブや内視鏡、注腸によってレシピエントに注入する治療法で、クロストリジウム・ディフィシル感染症(偽膜性腸炎)に有効であることがよく知られています。この治療法が、インスリン抵抗性のある肥満者で試験されました。非肥満健常者の腸管内容を移植された肥満者では、酪酸を産生する腸内細菌の増加を認め、インスリン感受性の改善が認められました。ヒトでもインスリン抵抗性のある患者の腸内細菌叢に変化を与えることが、病態を改善する可能性が示されました。 
プロバイオティクスとは、“宿主の健康維持に有益である生きた微生物およびそれを含む食品”であり、細菌を用いた治療法のひとつです。最近、ラクトバチルス・リユーテリ菌がGLP-1産生を増加させる、インスリン抵抗性を改善するなどの臨床成績が出てき始めています。ラクトバチルス属の乳酸菌で腸管バリア機能が回復するなど、今後の臨床研究の発展が望まれます。最近自体を用いるのではなく、腸内細菌の代謝産物を応用した治療も検討されています。短鎖脂肪酸は上部消化管で吸収されるため、下部消化管に作用するように加工したプロピオン酸を胞満者に投与すると、GLP-1産生が亢進して、食事量の低下、内臓脂肪量の低下を伴う減量および耐糖能の改善を認めることが報告されています。細菌を利用した治療法に比べて 安全性が高い治療法といえます。また、食物繊維が耐糖能障害を抑制する機序に腸内細菌が関与するため、個々人の腸内細菌の違いを踏まえた食事処方が必要となるかも知れません。

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