糖尿病性黄斑症について(その3)
Ⅳ 糖尿病黄斑症の治療
糖尿病黄斑症による視力低下は、不可逆的なことが多く、遷延化すると網膜の中心窩に硬性白斑が沈着して、恒久的な視力低下に陥ってしまいます。従って、視力低下が起こる前に如何に浮腫を引かせるかが治療のポイントになります。まず、実際の臨床の場で、現在行われているレーザー光凝固術と硝子体手術について考えてみます。
1)糖尿病黄斑症に対する網膜光凝固術
糖尿病黄斑症に対するレーザー光凝固術は視力低下を阻止するという成績が1985年に示されました。この凝固法には、(1)浮腫の原因となる毛細血管瘤などの異常血管を直接凝固し、漏出を止める直説法と、(2)びまん性漏出のある部分の色素上皮を凝固して、間接的に浮腫を引かせる格子状凝固法の2種類があります。実際には、糖尿病黄斑浮腫の病態が複雑で、漏出の原因が混在していることが多いため、直接凝固と格子状凝固は併用されて行われます。
(1)網膜光凝固術の良い適応
1. 毛細血管瘤からの漏出が主体と考えられる輪状硬性白斑を伴う黄斑浮腫。直接凝固単独、あるいは格子状凝固との併用で効果が期待できます。
2. 視力低下から時間の経っていない場合。黄斑が不可逆的な機能低下に陥る前に治療を行い、浮腫を改善させることで、視力の維持、もしくは改善が得られる可能性があります。
(2)網膜光凝固術の適応外
硬性白斑が長期間中心窩に存在している場合や、後極部の網膜全体に強い浮腫があるような場合は、光凝固は効きにくいことが多くあります。特に、後者では、光凝固斑が容易に得られず、必要以上に強い凝固を行うと、浮腫が引いた後に色素上皮の萎縮を作りやすいので注意が必要です。
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