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2020年3月9日

糖尿病性黄斑症について(その4)

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2)硝子体手術
 
1992年に、後部硝子体膜の肥厚があり、硝子体牽引の関与が強く示唆されるような症例に対して、硝子体手術が有効であることを初めて示しました。その後、後部硝子体剥離(post-erior vitreous detachment:PVD)を作成して浮腫の軽減が得られることが明らかにされました。さらに、PVDがすでに起きているような場合でも、単純硝子体切除が有効であったという報告もあり、硝子体手術自体が黄斑浮腫の改善に効果があることは広く認められるようになりました。硝子体手術が糖尿病黄斑浮腫を改善させるメカニズムとしては、
A 後部硝子体膜の除去による黄斑部への牽引解除
B 網膜内や硝子体中に存在するサイトカインの除去  
C 硝子体の酸素分圧の変化
などが考えられています。
 又、近年内境界膜剥離を併用することで、浮腫の消失、視力の改善がみられたとの報告や、この方法が再発例でも有効であったという報告がなされました。
 糖尿病黄斑浮腫は汎網膜光凝固術の後に増悪し、視力が大幅に悪化していることが多くみられます。多くの患者さんは光凝固に対する不満や、不安を持っています。しかし、実際は硝子体手術をしても、黄斑浮腫の視力改善には1年ほどかかり、長期的な観察が必要な場合がほとんどです。一方、患者さんの側は術後早期の大幅な視力改善を期待していることが多いため、術者と患者の考えに隔たりができないようにすべきなのです。糖尿病網膜症の鎮静化に汎網膜光凝固術が不可欠であることと、硝子体手術後の視力改善は緩やかであることを、患者さんに十分に理解して貰ってから、治療を始めるべきでしょう。

Ⅴ これからの糖尿病黄斑症の治療
 
現在行われているレーザー光凝固術と硝子体手術を行っても、糖尿病黄斑症で視力低下が防げない症例も少なくないのが実情です。近年行われ始めている抗VEGF(Vascular endo-therial growth factor:血管内皮増殖因子)療法について考えてみます。
1)糖尿病黄斑浮腫とVEGF
 血液網膜関門の破綻による血管透過性亢進は、糖尿病黄斑浮腫の主原因であり、これにはVEGFが深く関わっています。VEGFは血管内皮細胞間の結合を変化させ、解剖学的に細胞間液が集まりやすい黄斑部に浮腫をきたす要因となっています。実際、糖尿病黄斑浮腫での硝子体中のVEGF濃度は上昇していて、VEGFを抑えることは黄斑浮腫改善のために、理にかなった治療法と考えられています。
 抗VEGF薬が使用できる以前は、ステロイド薬の硝子体内注射、あるいはテノン嚢下注射が行われていました。
 現在、抗VEGF薬にはペガプタニブ(商品名:マクジェン)、ラニビズマブ(商品名:ルセンティス)、ベバシズマブ(商品名:アバスチン)などがあります。現在の所、これらの薬剤はわが国では糖尿病黄斑症への使用が認められていないものもありますが、いずれの薬剤も海外でその有効性が確認されています。
 これらの薬剤を用いた治療成績をみると、糖尿病黄斑浮腫の解剖学的な改善はもたらすが、視力の改善については成績が異なった報告がなされている。
 抗VRGF療法を含めて新しい糖尿病黄斑症に対する治療法の開発は現在も進行中です。今後の成果が期待されます。                     

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