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2021年11月8日

脳卒中について(その1)

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Ⅰ 脳卒中とは何か
 
 脳血管障害のなかで局所性脳機能障害と分類される疾患群が、一過性脳虚血発作と脳卒中に分類されます。脳卒中には、脳出血、くも膜下出血、能動静脈奇形に伴う頭蓋内出血と脳梗塞という疾患が含まれます。

Ⅱ はじめに
 
 わが国における脳卒中死亡率は1960年代には結核に代わって第1位でした。しかし、大規模な疫学研究により当時最も多かった脳出血が栄養不足と高血圧が原因であることが明らかになり、減塩と高タンパク食への栄養指導、高血圧治療の進歩により脳出血は激減しました。現在では脳卒中死亡は、癌、心臓疾患、肺炎に次いで第4位となっています。重篤な脳出血が減ったことで死亡率は激減しましたが、生存率が高くなったことと高齢社会になったことで、介護の必要な脳卒中患者数は増加していて、介護保険を含めた医療・介護費用は脳卒中が第1位となっています。高血圧性脳出血と同様な脳細動脈の病変で、脳細動脈の動脈硬化に起因するラクナ梗塞が大きく減少した一方、飽食の時代となりアテローム血栓性梗塞(粥状動脈硬化性梗塞)増加しています。さらに最近では高齢化で心房細動が増加したこともあり心原性脳塞栓症が増加傾向にあります。

Ⅲ 脳卒中は減塩と栄養改善による血圧低下と共に減少した
 
 これまで述べてきたように、1960年代まではわが国の脳卒中は脳出血死亡が死亡診断書上は脳梗塞の10倍以上と圧倒的に多かったため、欧米から誤診ではないかと疑問がだされていました。この問題を解決するために九州大学第2内科の勝木司馬之助教授は1961年から福岡県にある炭鉱の町、久山町で疫学調査を始めました。この調査研究は米国保健機構(NIH)から研究助成を得てミネソタ大学と比較研究を行い、ほぼ全例病理解剖という大変な努力で、実際には脳出血死亡がそれほど多くはないことを明らかにしました。なお、この疫学調査は、この後も現在まで40年以上も継続して行われおり、久山町スタディとして世界的にも有名になりますが、わが国の生活習慣と疾病の関係について貴重なデータを明らかにし続けています。
 秋田県の脳卒中登録研究では、雄和町の脳卒中の発症推移は1968年から20年間で人口10万人に対して453から193に激減(57%減少)しています。その要因として最大血圧平均値が144mmHgから132mmHgまで低下し、その間の高血圧の受療率が6%から27%に上昇したことが挙げられています。1961年に国民皆保険制度が始まり、受療率向上と共に減塩や栄養改善の指導がなされた効果が大きく影響しています。
 日本人の塩分摂取量は1955年頃が17g/日と多いが、2010年には10g/日近くまで低下しています。しかし、秋田県の中山間地の農村では1954年で27g/日であったことが報告されており、秋田県が脳卒中日本一であった理由が推測されます。当時の降圧薬は、レセルピンや利尿薬、β遮断薬などの現在の医療レベルからすると降圧効果が弱いものしかなかったため、当時の脳卒中減少効果は降圧薬によるものというよりも減塩と栄養改善によるものであった可能性が大きいといえます。欧米でも降圧薬治療で心血管イベントの抑制効果が実証されるのは1967年になってからでした。

 

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