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2021年6月7日

運動療法のメカニズムとその実際(その2)

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Ⅲ 脂肪肝、脂肪筋の改善方法
 
 それでは、脂肪肝、脂肪筋に対してはどのような治療方法があるのでしょうか。2週間の糖尿病教育入院中の患者さんを対象にした調査によると、骨格筋のインスリン感受性、脂肪筋は食事療法だけを行った場合にはほとんど変化しなかったのに対して、そこに運動療法を加えると、約20%も大きく改善することが明らかになりました。ここで行われた運動療法は、中強度の歩行運動を現状より平均で4,000歩前後増加させる程度でした。恐らく、運動は筋肉の細胞内脂質の燃焼を促進することで、脂肪筋を大きく改善してインスリンの効きを良くしたのだろうと考えられています。その一方で、肝臓に関しては、食事療法単独群でも運動療法併用群でも、両群共同様に30%近くの脂肪肝改善を認めました。
 これらの結果は、短期的な介入では、食事療法は主に肝臓、運動療法は主に骨格筋での細胞内脂質減少につながり、インスリン抵抗性を改善したのではないかと考えられました。やはり、食事、運動を療法行わないと全身の代謝状態はしっかりと改善できないのでしょう。
 これが逆に痩せている人に3日間の高脂肪食の負荷をかけると、脂肪筋は平均で1.2 ~1.3倍増化し、それに応じてインスリン感受性が低下しました。また、大変興味深いことに、脂質の溜まり方は、日常活動量(主に歩行)と強く関連していることが分かってきました。つまり、以前より推奨されている10,000歩程度の歩行を行っている人では、高脂肪食を摂取しした時の脂肪筋の増加はほとんど認められませんでした。
 この様な知見から、運動や食事による介入はたった数日間でも異所性脂肪を大きく変化させ、筋肉と肝臓の代謝を改善させうることが明らかとなりました。このことは、見た目が太っているか痩せている海外に筋肉や肝臓の肥満度を考えて治療する必要性を示しています。
 それでは、脂肪肝、脂肪筋はどうすれば簡単に発見できるのでしょうか。残念ながら、正確に測定するには精密機械が必要です。しかし、臨床的なマーカーを利用するとある程度推測ができます。具体的には、中性脂肪が高い、HDLコレステロールが低いということに加えて、肝機能のALT(GPT)に注目するする必要があります。一般的にはALTは40前後が正常上限ですが、30を越えたあたりから脂肪肝だけでなく脂肪筋やインスリン抵抗性が発生しているサインになっている可能性があります。
 脂肪肝や脂肪筋の患者さんが正常体重まで痩せるのが難しくても、異所性脂肪は最初の5%程度の減量で劇的に改善します。したがって、食事療法や運動療法を行っていても思うような減量が得られないと、くじけそうになった時には、中性脂肪、HDLコレステロール、ALTなどのマーカーの僅かな変化に注目して、「見た目はまだ太っていても、身体の中は痩せてきているんだ」と実感することで、モチベーションを維持して高めていくことも重要です。
                                    

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