高血圧と塩分制限(その1)
Ⅰ 糖尿病と高血圧
糖尿病患者の高血圧合併頻度は、糖尿病でない人の約二倍だといわれています。糖尿病と高血圧はそれぞれ動脈硬化の増悪因子ですから、高血圧を合併している糖尿病患者さんは、動脈硬化の危険が非常に高いといえます。このため、糖尿病患者さんの血圧管理は非常に重要となりますが、ここでも基本は食事療法です。
Ⅱ 食事療法の原則は適正体重維持のための摂取エネルギーの適正化
糖尿病の食事療法で適正なエネルギー量を摂取することの重要性は、今更いうまでもありません。適正な体重の維持は、インスリン抵抗性を解除して、膵臓β細胞の負担を軽くすることで、2型糖尿病の原因であるインスリンの作用不足を改善するばかりでなく、降圧効果もあることが知られています。
減量の降圧作用の有効性は、特に肥満者で高く、体重を1Kg減量することで収縮期(最高)血圧が1.2mmHg、拡張期(最低)血圧で10mmHg低下するといわれています。
Ⅲ 食塩(ナトリウム)制限
食塩を過剰に摂取すると、血圧が上昇する「食塩感受性」の人と、血圧変動が殆どみられない「食塩非感受性」の人がいます。「食塩感受性」が大きくなる要因には、肥満者、高血圧家族歴、高齢者、糖尿病などがあげられています。しかし、「食塩非感受性」の高血圧患者でも食塩制限で降圧効果が認められるため、食塩制限はすべての高血圧患者に必要だといえます。
一般的にも健康指向が高まり減塩の重要性が広く認知されるようになったものの、日本食特有の醤油、味噌、食塩を多用する伝統的な食文化と、近年の調理加工食品並びに外食の利用頻度の増加などで、食塩摂取量は再び増加する傾向にあります。国民栄養調査では日本人の平均食塩摂取量は1日13グラムとなっています。
食塩量は眼で実際に見ることができない上に、味覚の感じ方には個人差が大きいために、食塩制限の栄養指導はなかなか上手くいかないのが実情です。しかし、自分が毎日の食事の中で主に使う調味料や食品中の食塩量を知ることで、食塩量が客観的に把握できるようになります。
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