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2022年9月20日

高齢者糖尿病の血糖管理目標

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Ⅰ はじめに 
 
2016年5月に開催された第59回日本糖尿病学会年次学術集会で、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会による審議を経た、「高齢者糖尿病の血糖コントロールの目標」が発表されました。

Ⅱ 高齢者糖尿病と重症低血糖 
 
旭川医科大学代謝内科が薬剤性低血糖による意識障害を、旭川赤十字病院に救急搬送された症例の特徴を2005年7月~2006年10月の間と2012年から2013年の同時期の2回調査しました。その結果によると、両期間とも薬剤性低血糖の救急搬送例数は48例、47例と変化なく、全救急搬送例の約0.8%でした。両期間の大きな違いは年齢で、75歳以上の症例が、2005~2006年の調査時の39.6%から2012~2013年では55.3%に増加していました。さらに、独居並びに施設等入所の症例が50%を越えていました。
 重症低血糖は心血管病変のリスクであるばかりでなく、認知機能障害のリスクともなります。最近の研究では、重症低血糖があると認知症のリスクは1.68倍となり、逆に認知症があると重症低血糖のリスクが1.61倍に増加することが示されています。したがって、高齢者糖尿病   
の治療に際しては、重症低血糖のリスクを回避することが必要です。 

Ⅲ わが国と海外の高齢者糖尿病治療の状況 
  
このように、高齢者糖尿病治療では、高血糖の適切な是正とともに、低血糖をはじめとする治療に伴う有害事象の回避も若年・壮年の患者に比べて一層重要です。日本老年病学会では様々な臨床研究などのエビデンスを元に、高齢者を認知機能、日常生活動作(Active Daily Life : ADL)、合併疾患の有無などにより分類して、それぞれのカテゴリーに見合った血糖管理目標を提唱してきています。具体的には、高齢者であっても老年症候群(認知機能低下、ADL 低下、サルコペニア、フレイルなど)のない場合にはHbAlc7.0~7.5%、老年症候群がある場合には7.5~8.0(8.5)%とする考えを示しています。 
 海外では2012年のアメリカ糖尿病学会(ADA)ーアメリカ老年病学(AGS)の高齢者糖尿病治療のコンセンサスレポートや、2013年の国際糖尿病連(IDF)のレボートも同様の考えを示しています。
                                  
高齢者糖尿病症例の血糖管理目標(IDF)      
HbAlcの管理目標
    機能的に問題ない場合 7.0~7.5 %
    機能的に問題ある場合 7.5~8.0 %
    認知症がある場合    8.5%まで許容
    フレイルがある場合 8.5%まで許容

 日本糖尿病学会では2013年に血糖管理目標を年齢や罹病期間、合併症、低血糖のリスクなど患者の状態をもとに個別に設定すること、合併症抑制の中心目標はHbAlc<7.0%とするものの、患者の状態に応じてHbAlc<8.0%ともできる新しい方針を策定しました。しかし、高齢者について、臓器機能低下の程度、合併疾患・合併症の有無や老年症候群の併発などの身体的評価に加えて、患者を取り巻く社会的要因も含めて詳細に検討し、個別に目標を設定する具体的基準については明示されておらず、多様な高齢者の状態に応じてそれぞれ最適な血糖管理目標の策定が求められていました。 

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