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2020年8月17日

アクトスと膀胱癌(その2)

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Ⅳ 今回フランスで行われた臨床試験結果をどう考えるか
 
CNAMTS試験は、フランスの主要な健康保険データシステムから下記の条件を満たす患者を抽出して検討したものです。観察期間は2006年~2009年でした。

①2006年に1個以上の糖尿病薬を服用していた糖尿病患者(149万1060人)
      アクトス内服患者 :15万5535人(男性53.8%)
      アクトス非内服患者:133万5525人(男性53.4%)
②40歳~79歳(2006年12月31日現在)
③膀胱癌の既往がない、もしくは抽出後6ヶ月以内に膀胱癌の発症を認めない
④アクトスを2回/6ヶ月以上内服した場合をアクトス内服例とする
 
この調査の結果、膀胱癌の奏発症数は。アクトス内服群で175人/15万5535人(0.11%)、アクトス非内服群で1841人/133万5525人(0.14%)、全体では2016人/149万1060人(0.14%)というものでした。アクトスを内服している人達の方が膀胱癌が少ないという結果でした。しかし、この結果をアクトスの内服期間や内服量、性別、年齢などで補正するとアクトス内服群の方が膀胱癌の発症が多いという結果が出たと主張して、アクトスは危険だと訴えたのでした。さらに、彼らの解析では、膀胱癌のうち早期癌を除外した進行癌のみでアクトスと癌の発症を論じています。仮に、ある薬物に発癌性があったとしても、内服して直ぐに癌を発症させることは考えにくいため、全ての症例が進行癌になっているはずはなく、早期癌も含めて議論するのが一般的です。今回の結果も早期癌を含めて検討すると、アクトスが他の糖尿病薬に比べて特に膀胱癌を起こしやすいという結果は出ませんでした。
 これらの検討を踏まえて、欧州医薬品評価委員会はアクトスのベネフィットとリスクのバランスを正しく評価すべきだとして、「アクトスは2型糖尿病患者にとって有効な治療選択肢である」と報告しました。

Ⅴ 2型糖尿病と癌をどう考えればよいのか
 
2010年にアメリカ糖尿病学会とアメリカ学会が合同でコンセンサスレポートを発表しました。それによると、

①2型糖尿病は癌のリスクを高める。
②糖尿病と癌は、両疾患のリスクファクターである年齢・肥満・食生活・運動不足がある程度関与している。
③糖尿病と癌の直接的関連の可能性としては、高インスリン血症・高血糖・炎症が考えられる。
④食事療法・運動療法・体重減少は2型糖尿病や癌の転帰を改善するため、推進すべきである。
⑤糖尿病患者は適切なガン検診を受けるべきである。
⑥まだ限られたエビデンスだが、メトホルミンはがんのリスクが低く、過剰なSU薬やインスリンはリスクを高める兆候がある。
⑦がんのリスクは糖尿病の薬剤選択において主要因子とはならない。しかし、癌発症のハイリスクの患者さんでは、これらの要素は慎重に考慮すべきである、という結論でした。

この考えが今までのところ、最も妥当な考え方だといえると思います。

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