低炭水化物食について(その2)
日本糖尿病学会が発表した「糖尿病における食事療法の現状と課題」という提言です。
Ⅳ 糖尿病治療における炭水化物制限の意義と課題
2型糖尿病の治療には、体重の適正化が第一義的な意味を持ちます。肥満者の減量を目的とした食事療法で、主として脂質を制限すべきか炭水化物を制限すべきか、欧米では歴史的に長い議論があります。これは、炭水化物摂取量を50g/日以下とするアトキンスダイエットの是非論に象徴されていますが、BM130以上の肥満者に50~60g/日の炭水化物制限下にエネルギーを自由に摂取させた群は、総エネルギー制限と脂質制限を指導した群よりも6ヶ月目で有意な体重減少をきたしたという論文が2003年に発表されて注目を集めました。
しかし、2006年に報告されたメタ解析は、低炭水化物食は6ケ月までは有意な体重減少をもたらすが、1年で差はなくなり、低炭水化物食では血中LDLコレステロールの増加をきたすと指摘しています。低炭水化物食の長期効果を見出し得なかった理由として、症例数の少なさと、30~50%に及ぶ高い脱落率、さらにはエネルギーを自由に摂取させたとしてはいるけれど、総エネルギー摂取量に関する記載が乏しいことが問題視されています。
最近の研究では,低炭水化物食では心血管疾患のリスクは低減しないで,総死亡率が有意に増加したとも報告されています。
V まとめ
肥満の是正は、糖尿病の予防並びに治療で重要な意義があります。体重の適正化を図るためには、運動療法とともに積極的な食事療法を行うべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とします。総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物だけを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点について担保するエビデンスが不足しているため、現時点では薦められません。
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