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2023年5月5日

先行的腎移植について(その1)

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Ⅰ はじめに 

先行的腎移植(pre-emptive kidney transplantation : PEKT)とは、慢性腎臓病(chronic kidney disease : CKD)の末期病態で腹膜透析や血液透析を経ないで腎移植を行うことをいいます。我が国では、何らかの理由で腎移植直前に一過性に透析を経験した症例も広い意味での先行的腎移植に含まれています。従来、先行的腎移植は血液透析が難しい小児で勧められてきた治療法ですが、成人でも、血液透析を経てから腎移植を行うよりも、透析を経ずに腎移植を行った方が、腎移植生着率,患者生存率が良好であるとの海外から報告されていました。現在我が国では、移植直前の透析も含めると、生体腎移植全体の約25%が先行的腎移植となっています。

Ⅱ PEKTの変遷 

小児でのCKDは生来の腎症が認められる症例が多く、成長障害や知能・精神発達に大きな影響を及ぼすことや、体格の未発達の小児への血液透析と腹膜透析導入に関する技術的な問題もあり、先行的腎移植は積極的に行われてきました。一方、成人では、腎移植実行時期に関して小児とは異なる考え方がされていました。すなわち、保存的腎不全状態から末期腎不全になり、腎代替療法である透析療法を行って、腎不全患者の尿毒症状態が改善し全身状態が安定してから腎移植が実施されるのが一般的な治療方針でした。しかし、最近ではあらゆる疾患に対する治療の基本方針として、避けうる肉体的苦痛や精神的苦痛は回避することが推奨されるようになり,腎代替療法では、血液透析療法でのアクセスの作成、継続的な穿刺、長 時間透析の負担や腹膜透析におけるカテーテル留置術、腹膜炎などを回避可能な先行的腎移植が腎代替療法の第一選択となりえると考えられるようになってきました。 

Ⅲ 小児における先行的腎移植の有用性 

小児におけるCKDでは、先天的尿路発育不全や尿路奇形、あるいは遺伝的腎疾患により腎機能が低下したために、やむなく透析療法が導入されています。透析療法が導入されることで生命維持は可能となりますが、内分泌的骨代謝障害による成長障害や知育発育障害がみられます。また、精神的な面からも発育障害がみられ、思春期までに種々の障害は増悪します。このような小児CKD患者には、腎移植に耐えられる身体状況になった場合には積極的な先行的腎移植が行われてきました。小児での腎移植後の腎機能が良好な場合の成長は著しく、免疫抑制薬であるステロイドの影響があるものの、身長と体重の1年の成長速度は健常小児と同様の変化がみられるようになります。腎移植後の予後に関しても先行的腎移植を行った方がよいという成績が得られています。小児での腎移植の問題点としては、小児臓器提供者がほとんどなく、大半が両親を含めた成人よりの腎提供なため、成長障害がみられる小児CKD患者は低身長、低体重で、術中術後の管理が非常に難しいことでしたが、最近の医療技術の進歩と、さらに必要不可欠な免疫抑制薬も発達してきたことから確実安全に腎移植がおこなわれるようになってきています。 

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