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2021年7月19日

温泉療法の効用(その3)

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Ⅲ 現代の温泉療法

(1)循環器疾患
 
温熱作用による血管拡張、末梢血管抵抗減少、心拍数増大、利尿作用、降圧作用などのため心臓の負担は軽減します。
 心不全の温泉浴は、41℃、10~15分間、半臥位浴が好ましいとされています。入出浴の際の労作を和らげるため出浴後20~30分は安静とする必要があります。炭酸泉や硫黄泉、硫酸塩泉は降圧効果が大きいため、炭酸塩泉は心臓の湯と、硫酸塩泉は中風(脳卒中)の湯ともいわれています。
 高血圧の温泉浴は、温湯39~41℃、入浴時間5~10分、午後入浴または就寝前入浴が良いのですが、夜間降圧型では就寝前入浴は避けます。早朝高血圧型では午前入浴が勧められます。

(2)呼吸器疾患
 
静水圧による横隔膜の挙上、解剖学的死腔の減少、水蒸気による喀痰排出の促進のため、呼吸器疾患に温泉浴や運動浴は好適です。水中呼気法を併用すると末梢気道の虚脱が抑制され、口すぼめ呼吸の口の形が効果的となります。
 慢性閉塞性呼吸器疾患COPDでは、刺激の少ない38℃の温水に肩まで浸かり鼻からゆっくり息を吸い込み、次ぎに鼻を水中に2~3㎝ほど沈めて口から水中にゆっくりと息を吐き出していく水中呼気法を1回15~20分、一日1~2回、週3~5日、2ヶ月間行うと、呼吸機能や動脈血酸素分圧は改善します。温泉蒸気には喀痰排出促進、抗アレルギー作用、気道過敏性軽減などが認められていて、温泉蒸気を満たした部屋で30分間の安静臥位することでアレルギー性鼻炎の症状は軽減します。

(3)皮膚疾患

アトピー性皮膚炎では皮膚表面に黄色ブドウ球菌が繁殖していて、皮膚をかくと傷口から黄色ブドウ球菌が侵入して炎症を増大させて痒くなり、また核という悪循環があり、皮膚症状を悪化させています。草津温泉に含まれているマンガン、ヨウ素、水素イオンが共同して強い殺菌作用を発揮して黄色ブドウ球菌を死滅させ、この悪循環を断ち切って皮膚症状を改善します。尋常性乾癬や褥瘡にも有効です。
 皮膚疾患に対する温泉水の効果は泉質により様々です。銃創には粘膜保護作用、メタ珪酸には角質再生作用、明礬(アルミニウム塩)には収斂、殺菌、制汗・防臭などの作用、硫黄には殺菌や止痒、抗炎症、角質軟化などの作用や喀痰の粘調性を低下させる作用(痰の湯)がみられます。食塩は肌によく付着して汗の蒸散を抑えるため保温効果が高いことがよく知られています(熱の湯)。塩化物泉や硫黄塩泉は抗菌作用や細胞再生作用があり傷の湯といわれています。

(4)精神疲労・ストレス
 
情動や運動が免疫機能を修飾するとされています。温熱、イオン、運動などの非特異的な刺激が視床や視床下部に作用して脳下垂体と副腎を介して、コルチゾールやエンドルフィン、サイトカインなどを分泌させ免疫・内分泌機能を調整する一方で、自律神経機能を調整すると推定されています。
 温泉浴や大浴場などでは脳波でα波が増加しβ波が減少すること、また副交感神経が優位になること、筋電図で筋放電量が減少することが確認されています。このようにかつて転地療法などと称されていた作用が総合性生体調整作用として解明されてきています。精神疲労や肉体疲労が温泉浴や大浴場などにより緩和されることに科学的証拠が示されたといえます。

Ⅳ おわりに
 
かつて戦傷や疲労を癒した湯治から呼吸・循環器疾患への治療へと温泉医学は発展してきています。また漠然と転地療養といわれていた作用が、視床ー脳下垂体ー副腎径路を介した自律神経・内分泌・免疫機序として解明されてきています。
 温泉医学は伝統医療の域を超えて高度先端医療を補う相補代替医療として見直され、さらに科学的証拠を積み重ねてきています。入浴や温泉は日本の美しき伝統文化でもあります。これからも温泉は医療としても文化としても多くの人から愛されていくことでしょう。 
                                

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