再診の方は原則「予約制」となります。
052-930-1311
お知らせ
2019年3月4日

熱中症について(その1)

0

Ⅰ はじめに
 
 「熱中症」とは、暑熱環境下で発生する様々な障害の総称です。ヒトの体温は大脳の視床下部にある体温調節中枢によりコントロールされています。この温熱中枢が熱によって生じたサイトカインや、様々の炎症反応、あるいは熱により直接的な細胞障害を起こされることで、生体の熱のバランスを崩してしまった状態が「熱中症」なのです。言い換えると、「熱中症」とは、体内での熱の放出と産生のバランスが、高温、多湿、無風などの環境条件により破綻して、うつ熱になることで生じる諸症状のことを指しています。
 最近は、スポーツ活動に伴う若者での発症や、地球温暖化現象に加えて、都市部でのヒートアイランド現象(都会でみられる、空調や自動車からの排熱、建物や舗装された道路からから反射される熱によって、気温が都市周辺部よりも高くなる現象)も相まって、老人での発症が増加してきており、社会的にも軽視できない疾患となってきています。
 今回は、我が国の救急医療の現場からみた熱中症の実情を紹介しながら、熱中症の実像に迫ります。

Ⅱ 熱中症の現状
 
 2006年6月~8月の3ヶ月間に全国の救命救急センターおよび救急指導医施設の中から、1例以上の熱中症患者報告があった66医療機関の協力により収集されたデータを元に、我が国の熱中症の現状をみてみましょう。
 熱中症の全症例数は528例(男性413人:女性113人:性別不明2名)で、平均年齢は41.5歳(3~93歳)でした。
 熱中症の発生と気温との関係を調べてみたところ、以下のようなことがわかりました。

1)気温が高く、晴天時に発症件数が増える傾向にありました。

2)いったん気温が下がった後に気温が上昇した時に熱中症の発症が多くみられました。これは、急激な気温変化に体温調節が追いつかないために熱中症を発症したと考えられました。

3)気温上昇が続いた状況では、熱中症の発症件数が減少する傾向が見られました。これは、高温に身体が慣れてくるためと考えられました。
 つまり、急に暑くなった場合は、激しい運動を避け、暑熱環境に身体を慣らすことが、熱中症の発症予防に有効だということです。
 男女別の発症年齢を検討した結果では、男女ともに若年層と中高年層の二層性の上昇を示していました。男女ともに若年層はスポーツによる発症であり、中高年層では男性は仕事中の発症が多いことを示す一方、女性は高齢層に多く、これは独り暮らしの女性が自宅内で発症する例が多いことの表れでした。高齢者は加齢に伴う熱への感受性の低下や、身体疾患とその内服薬の影響、例えば心不全などでの利尿薬の内服や水分摂取制限などの影響、腰椎や膝の変形性疾患による暑熱環境からの脱出困難なども関与するものと考えられます。

 

一覧に戻る
0
ページトップへ
ご予約はこちらから
tel 052-930-1311 FAX 052-930-1310
再診の方は、原則「予約制」となります。※急患や初診患者はこの限りではありません
地下鉄東山線千種駅5番出口から徒歩1分
地図を見る
診療時間と休診日